十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第一章>
「コラッ! 片桐悠!」
耳をつんざくような甲高い声で急に名前を呼ばれた。
「また授業サボったんでしょ」
仰向けに寝転がったままうっすら目を開けると、大きな漆黒の瞳が俺を見据えていた。その距離、数十センチ。何度かまばたきをしているうちに、それが青木あかねだということに気がついた。
「あのさ、パンツ見えてるんだけど。ピンクの水玉」
あかねはものすごい早さでスカートを両手で押さえた。あかねとも幼稚園の頃からの付き合いで、今でも母親同士がお互いの家に行き来してお茶を飲んだりしている。昔は家族ぐるみでキャンプに行ったり、誕生日パーティを開いたりしたこともあった。この頃は全員で集まることも減ってきたが、あかねの家族とは今でも会えば挨拶ぐらいはしている。
「色まで言うことないでしょ!」
あかねは耳まで赤くして、口を尖らせた。
作品名:十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第一章> 作家名:朝木いろは