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朝木いろは
朝木いろは
novelistID. 42435
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第一章>

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 浴槽に浸かりながら、今日バス停で起こった出来事を思い出していた。あの女はガムの包み紙にサラサラとメモを書き残しながら、首をかしげて言った。
「どこかで前に会ったことありますよね?」
 俺はすぐに否定したが、女は納得がいかないようだった。数秒考え込んだ後、女は丸い瞳をさらに大きくして「あっ」と小さく声を出した。
「思い出した。一高の二年三組、片桐悠さん」
「え? なんで? なんで知ってんの?」
「うちの学校では有名ですよ。ほら」
 女は通学カバンから素早く携帯を取り出して指で画面を操作し始めた。そして、携帯を俺の方に近づけてきた。ちらっと見た瞬間、洋人の言葉を思い出した。あの日学校の屋上で、俺の情報をどこかに書き込んだと言っていた。削除するように言ったのに結局無視か、あいつは。胃のあたりがずんと重くなるような不快感を持ったが、女と目が合った瞬間、そんな気持ちは一気に吹っ飛んでいった。脳からアドレナリンが大量放出されているのか心臓がドキドキして気分がこの上なく高揚している。この得体の知れない感情は一体何だろう。俺が俺自身じゃなくなっていくようで、なんだかそら恐ろしかった。