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朝木いろは
朝木いろは
novelistID. 42435
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第一章>

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「起立」
 日直係の覇気のない声が遠くで聞こえた。俺は皆より一歩遅れ、右足をかばうようにしてゆっくりと立ち上がった。
「そこ、ダラダラしない」
 小谷のピシャリとした声が教室中に響き渡った。
「先生、片桐君は足を怪我しているんです」
 間髪入れずに、あかねが声をあげた。
「あ、そうなの。じゃあ無理に立たなくていいから」
 小谷は俺の方を見て、意味ありげな微笑を浮かべた。
 生徒たちが着席した直後、突然誰かの机から大きな着信音が流れた。しかも振動音つきで。
「一体誰なの? 授業中は携帯の電源は切るって決まりでしょう」
 小谷が腕組みをして声を張り上げた。生徒達は黙り、教室はシンと静まり返った。
「決まりは守らないといけないよね。もう高校生なんだからそれぐらいわかるでしょ? 本来は学校に携帯なんて必要ないの。でも、あなたたちのお父さん、お母さんがうるさいから学校は仕方なく許可をしてあげているわけ。そもそも授業中に電源が入っているなんておかしいよね? 授業を聞く気があるなら先生への敬意を示してほしいの。私、ルールを守れない生徒は嫌いよ」
 結局、一時間目の国語の時間は説教で始まり説教に終わった。小谷は興奮すると熱く持論を語り始め、チャイムがなるまでぶっ通しで喋り続ける。生徒たちが飽き飽きした表情を浮かべていてもお構いなしだ。