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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 2 御前試合

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「・・・まあ、そこばかり強調されて、ユリウスの成長を見てもらえないのは腹立たしいけれどね。でもオリガが噂を信じてないって言ってくれて嬉しかった。あなたなら、ちゃんと聞いてくれるって思ったからきちんと話をしておきたかったのよ。私はユリウスとたしかにそういうお付き合いもしているけれど、それは別にリシエールをどうにかしようとか、そういうつもりでしているんじゃないの。・・・信じてくれる?」
「もちろん。私の知っているアリスはそんなことをする人間じゃない。それにユリウス王子は君と親しくなってからメキメキ成長しているのも事実だ。きっといいお付き合いなんだと思うよ。」
「ありがとう。そんな風に思ってもらえているなんて本当に嬉しいわ。じゃあ話を戻してオリガとアンの話をしましょうか。」
「だから私はアンドラーシュ様の事をそんな目で見たことはないんだって言っているだろ。」
「あら、そんな目ってどんな目かしら。」
「あ、アンドラーシュ様・・・」
「さて、捕まえたわよオリガ。人の話は最後までちゃんと聞かなきゃダメでしょう。」
 そう言いながらアンドラーシュはオリガの両肩をつかんで自分の方を向かせる。
「・・・って、何で泣いてるのよ。」
「わ・・・私は・・・未熟かもしれません。御前試合でもあんなみっともない負け方をしてアンドラーシュ様のお顔に泥を塗ってしまったかもしれません・・・ですが・・・私は・・・辞めたくありません。」
「え?何?どういうこと?」
 本格的に泣き始まってしまったオリガの様子にアンドラーシュが狼狽えてアリスに助けを求めるような視線を送る。
「あーあ。泣かせちゃった。」
「泣かせちゃった。じゃなくて。何でオリガは泣いてるのよ。」
「貴方がちゃんとオリガに話をせずにもったいぶった言い方をするから、誤解させているんでしょう。」
「ああ、なるほど。それで『辞めたくない』か。ねえ、オリガ。アタシは別にあなたをやめさせるつもりなんかないわよ。」
「・・・ふぇ?」
「誤解させちゃったなら謝るけど、今進めている計画にはあなたの脚が必要不可欠らしいの。だからあなたには今の部隊は離れてもらって、ジゼルの下についてもらうわ。でもこれは、あなたが不要だからじゃないのよ。むしろ、この先必要になるからなの。わかってもらえるわね?」
「・・・はい。」
「それで、その計画っていうのはどういうものなの?」
「ふっふっふ。それはアリスにもまだ内緒よ。っていうかアタシもよくわからないのよ。・・・実際、オリガを使う計画はルチアの思いつきで、実現できるかどうかは微妙な線らしいしね。」
「まあ、それならそれで後でオリガに直接聞くからいいけど。」
「ああ、それはダメ。そんなことしたらオリガは本当に辞めなきゃいけなくなるから。さらに下手すれば死罪もあり得るわ。」
「死罪って・・・。」
 冗談でしょうと言おうとしたオリガは、アンドラーシュの目を見て言葉を飲み込んだ。 だが、アリスはアンドラーシュの厳しい表情に怯むことなく問いかける。
「どうしてそんなに厳しい罰則を付けなければいけないのかしら。仲間同士でしょう。」「そうね。本当に仲間同士ならそんな事をする必要はないわ。でもね、私たちの中に裏切り者がいるとしたらどうかしら。」
「う・・・裏切り者って・・・」
 アンドラーシュの言葉を聞いて青ざめるオリガを見てアンドラーシュが少しだけ表情を緩める。
「まあ、現時点ではいるとも言えないし、いないとも言えないってとこかしらね。」
「では、私は疑われているということですか?」
「いいえ、あんたには嫌疑はかかってないわ。かかっているのはアタシとアリス。」
 アンドラーシュの言葉にアリスが不機嫌そうに眉をしかめる。
「・・・嫌疑の根拠は?」
「ジュロメ攻略の際にアルラウネが仕掛けられていたでしょう。アレが原因でエドがジュロメに行くことを知っていた人間が疑われているわ。つまり、あの時あの場に居たアタシとあんた。それにヘクトールにメイ。あとはメイの妹二人ね。ちなみに出発直前に話を聞いたレオとルーは除外。」
「クロエは?」
「あの子はエドをかばって捕まったからね。今回は容疑者からは外れているわよ。」
「そう・・・よかった。」
 アンドラーシュの言葉を聞いたアリスは、ほっと胸をなでおろした。
「アレクは最初クロエも含もうとしたんだけど、エドが猛反発してそれで容疑者から外れたの。まあ、あの子の場合は、最近エドと仲がいいし、よく一緒に居たりするからその気になればエドの事をさらえるのに、そういう素振りを見せなかったっていうのもあるしね。もちろんエドはアタシやアリスのことも反対したんだけど、さすがにアレクが譲らなくてね。」
「まあ、そうでしょうね。普通に考えればアレクの言っていることが正しいでしょう。疑わしきは中枢からは排除するべきだもの。それで、もしかして疑われている私はアレクの所から外されるのかしら。」
「ご名答。アタシ達疑われている組はお互いに監視も兼ねて一緒のチームになるわ。」
「私と貴方とヘクトール殿とメイ?あらあら、なんていう戦力の無駄遣いなのかしら私達だけでリシエールを落とせちゃいそう。」
「冗談じゃないわよ。アタシはエリザベスとかランドールなんかの相手をするのはゴメンよ。」
 口角を下げるようにして口元を歪めて、アンドラーシュはうんざりだと言わんばかりの表情で吐き捨てるように言った。
「確かに私も母さんの相手なんかしたくないわね。」
「あの・・・母さんって・・・。」
「ああ、そういえばオリガには話していなかった。この間御前試合の決勝でカーラさんと互角に戦っていた人が居たでしょう。あの人が私の母なの。養母だけどね。」
「え・・・・・・?ええっ?グランボルカ仮面が?」
 たっぷりと間を開けて驚くオリガを見てアリスはくすくすと笑いをこぼした。
「まあ、あの時は元気そうな母さんを見られて安心したわ。ちなみに、アレクとリュリュ様を襲った男のほう。あっちはレオの実のお父さんなのよ。」
 アリスはあっけらかんといっているが、オリガは彼女になんと声をかけたらいいのかわからずうつむいた。
「そんな深刻そうな顔しないでオリガ。私もクロエもレオももう割り切っていることだから。」
「うん・・・」
 そう言って再びうつむくオリガの背中を叩いて、アンドラーシュが明るい口調で口を開いた。
「ま、そういう訳で、アタシもオリガがこれから何をするのか聞かされていないのよね。詳しい話はアレクとジゼルが直々にするそうだから早く行って聞いてらっしゃい。」
「ですが・・・。」
「新しい上官、それに加えて総大将の呼び出しに応じられないって言うのならやっぱりやめてもらおうかしら?」
「ええっ?」
「・・・なんてねアタシ達のことはいいから早く行きなさい。」
「はい・・・失礼します。」
 そう言って一礼し、廊下を二、三歩進んだところで、オリガが立ち止まり振り返った。「私は、アリスのこともアンドラーシュ様のことも信じていますから。・・・では失礼します」
 そう力のこもった声で告げて頭を下げると、オリガは廊下をアレクシスの執務室の方へと歩いていった。
「・・・だってさ。」