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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 2 御前試合

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「オリガったら本当にいい子なんだから。私、本気でオリガの事好きになっちゃいそう。」
「やめなさいよ。あんたにはユリウスがいるでしょ。」
「じゃあ・・・殿方はユリウスで女性はオリガってことでどうかしら。」
 アンドラーシュの言葉に真剣な顔でしばらく悩んだあと、アリスがいいことを考えたとばかりに言うが、アンドラーシュは少し眉をしかめてため息をついた。
「そんな、『朝はパンで昼はパスタ』みたいに軽く言われても。」
「いえいえ。二人共夕食の後のメインディッシュです。・・・あたっ」
 とっておきの良い顔で言い放つアリスの額をアンドラーシュが拳で軽く小突く
「なお悪いわ。ふたりとも純情で嫉妬深そうだし、それこそ血で血を洗う争奪戦が繰り広げられかねないでしょうが。・・・まあ本当に起こったらオリガの圧勝だろうけど。」
 普段から鍛えているオリガと、主に本を読んでばかりいるユリウスとではそもそも比べるべくもない。アンドラーシュはそう思ってオリガの圧勝だと言ったのだが、アリスの反応はアンドラーシュの思っていたものとは違っていた。
「あら、あれでユリウスも中々強いんですよ。意外と知られていませんけどね。」
「え、強いの?」
「ええ。あっちのほうがとても。」
 そう言って顔を赤らめるアリスを見て、アンドラーシュは一つ咳払いをする。
「あんた、いつからそんな子になったのよ。」
「冗談ですよ、冗談。」
「・・・ま、それはさておき、本当のところ、スパイはあんたなんでしょう?・・・なーんて。」
「あらら。バレちゃいました?」
「・・・本当なのか?」
 冗談半分で言った言葉に対するアリスの返答を聞いて、アンドラーシュが一歩距離をとって腰の剣に手を添えて身構える。そんな彼の様子を見て、アリスが肩をすくめて困ったような表情を浮かべた。
「嘘に決まっているでしょう。天地神明に誓ってジュロメの件は私じゃありません。」
「・・・ならいいんだけど。」
 ほっとしたような表情で構えを解いたアンドラーシュを見てアリスが微笑む。
「少なくとも。今あなた方を裏切っているということはないわ。」
「その言い方だと、将来的にはわからないと言われているように取れるんだけど。」
「ええ、そう言っているつもりですよ。・・・人の気持ちなんていつどう変わるかわかりませんからね。・・・特に自分の気持なんて、一番わからないでしょう?実際、そういう話もいただいていますし。」
 アリスはそう言って懐から密書を取り出してひらひらと振ってみせる。。
「そういう話って・・・まさか。」
「ええ。そういう話。よかったら、アンも一緒にどうかしら?なかなかの好条件よ。」
 そう言って浮かべたアリスの笑いはどこか自嘲しているような、悲しんでいるような、微妙な色をたたえていた。