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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 2 御前試合

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 第三試合が終わった所で、医療部門、軍略部門の結果が実況のルーの手元に届けられた。
「おっと、どうやら軍略、医療部門の結果が出た模様です。医療部門の優勝者はセロトニア商船団船医ホアン。軍略部門は・・・ユリウス・リシエール?」
「ふむ。あやつめ、最近何やらアリスと二人でコソコソやっていると思っておったが、軍略の勉強をしておったのか。」
(・・・まあそういう勉強だけというわけでもないと思うんですけどね。)
「なんじゃ、何か言いたいことでもあるのか、ルー。」
 ルーの視線に気がついたリュリュが訪ねるが、ルーは曖昧な笑顔で首を振った。
「いえ、特には。さて、次の試合ですが・・・これはまた見応えのありそうな試合です。グランボルカ仮面弐號選手対アンジェリカ選手。今回の参加者の中でも特に強豪の集まるブロックを勝ち抜いた猛者二人。特にグランボルカ仮面弐號選手は倒された相手がことごとく何をされたか理解出来ないままに倒されているという謎の魔法の持ち主です。さあ、この試合どうみますかリュリュ様。」
「ふむ。おそらく弐號はレオと同じ系統の魔法の持ち主ではないかのう。だとすれば対戦相手が何をされたかわからず倒されたと言うのもうなずける話ではあるぞ。」
「しかしながら、対するアンジェリカ選手は自動(オート)攻撃(カウンター)の魔法の持ち主。魔力が上回っていれば時間停止中でもアンジェリカ選手の自動攻撃が弐號選手を迎撃する可能性もあり、勝負はわかりません。」
「うむ。ちなみにアンジェは先週の訓練でデール同様レオの魔法を上回っておる実績があるからのう。これはおそらくアンジェの勝ちではあるまいか。」
「それは楽しみです。さあそれでは第四試合選手入・・・」
 言いかけたルーの手元に一枚の紙が差し入れられた。
「・・・ここでどうやら弐號選手から。体調不良のために棄権する旨の申告があったとのことです。これで、第三試合はアンジェリカ選手の不戦勝となり、アンジェリカ選手は二回戦にコマを進めることになります。」
「ふむ、棄権か。久々にアンジェの活躍が見られると思ったのじゃが、残念じゃのう。二回戦に期待するとしようかのう。」
「そうですね、しかしながら二回戦のアンジェリカ選手の対戦相手はヘクトール選手。中々に手強い相手です。」
「しかしアンジェならやってくれるとリュリュは信じておる。」
「はい。期待しましょう。さて次の試合ですが、グランボルカ仮面1号選手の登場ですね。予選はすべて一撃でのKO勝ち。対するカーラ選手はすべて相手のギブアップ勝ちとなっています。ちなみにカーラ選手は一撃でKOできる威力の攻撃に回復魔法を載せて相手にぶつけることで怪我をさせずに恐怖を与え、ことごとく無血降参をさせています。」
「何を隠そう、リュリュが負けたのはカーラなのじゃが、あの攻撃は怖いばかりで痛くはないが、降参するまでアレを続けると言われてしまえば降参せざるを得ないからのう。実際、あれがトラウマになり再起不能になった騎士もおるようじゃし。」
「僕もその試合を見ていましたが、中々に凄惨な光景でした。相手が降参を口にしようとすると、攻撃をして口を開かせない。場外へ逃げようとすれば、捕まって舞台の真ん中に連れ戻されるということを、最後に相手の騎士が恐怖で失神をするまで続けていましたからね。恐ろしい話です。」
「最初は笑っておった観客も最後はドン引きじゃったからのう。最悪の魔女は健在といったところか。」
「さあ、それでは両選手出揃って、第五試合開始です。」


「どういうつもりかしら。」
 試合開始早々、大きな匙のような鈍器を上段に思い切り振りかぶって仕掛けてきたグランボルカ仮面の初手をフレイルの鎖で受け止めたカーラは、グランボルカ仮面に向かって言った。
「おやおや、やっぱりあんたにゃバレちまうか。」
「そんなわかりやすい武器を使っておいてよく言うわね。あっちはランドールでしょう。」
 押し返そうとするカーラと押しきろうとしているグランボルカ仮面。 親しげな口調ではあるが、互いに声に余裕の色は感じられない。
「もう一度聞くわよ、今更何をしにきたの?、あなた達はテオについたのでしょう。まさか今さら改心しました。なんて言わないわよね。エリザベス。」
「もちろんそんなつもりはないさ、あたしとランドールはエーデルガルドとリュリュ様をさらうために来たんだからね」
「そんなこと、私が黙って見過ごすわけがないでしょう!」
 そう言ってグランボルカ仮面ことエリザベスの攻撃を押し返すとカーラは試合場の脇で見ていたエドを背中にかばうような位置に立って叫んだ。
「あなた達があくまでテオの味方をしてこの世界を終わらせようとするのならば、私が絶対にそれを阻止する!アレクシス!会場のどこかにランドールが居るはずです。あなたはリュリュを安全なところへ!エドは私が守ります!」
 カーラに言われてアレクシスがリュリュを自分のマントの中に隠すように抱いて立ち上がり、閲覧席から通路へと走り出す。が、しかし、通路にはグランボルカ仮面弐號ことランドールが立っていた。
「よう、アレクシス。久しぶりだな。」
「ランドールおじさん・・・」
「お前にあんまり手荒なことはしたくねえ、その子をこっちによこしな。」
「・・・お断りします。黙ってリュリュを渡すくらいなら、ここであなたと戦って討ち死にした方がマシです。」
「おいおい、人の上に立つ人間がそんなんじゃ駄目だろう。大将っていうのは何が何でも生き延びないと、その集団自体が死んじまうんだぞ。・・・まあ、いいや。妹にちゃんとお別れを言いな、どっちにしてもこれが今生の別れになるんだからな。」
「ならねえよ。」
 声と共にレオがランドールの後ろから斬りかかるが、ランドールは振り返る事も無くレオの攻撃を後ろ手に自分の剣で受け止めた。
「おう、元気そうだな。バカ息子。・・・ん、もしかしてそっちはソフィアちゃんか?いやあ、綺麗になったなぁ。それにカーラにも勝るとも劣らぬ見事な・・・。」
レオをはじき飛ばして振り返ったランドールはソフィアの姿を見て表情を緩めた。
「あ、はい。ご無沙汰しています。」
「まだこの馬鹿息子の世話してくれているの?こんな奴に構うのやめておじさんと一緒に来ない?おじさんのほうが色々といいことしてあげられるよ。」
「ソフィア!挨拶してないでこのクソオヤジを捕まえるのを手伝え!」
 頭を下げるソフィアに向かってレオが声をあげて斬りかかるが、ソフィアは『うーん』と唸っているばかりで一向に武器を構える素振りを見せない。
「遠慮しなくても良いんだぞソフィアちゃん。おじさんが昔みたいに二人まとめて遊んでやるから・・・」
 レオの攻撃を余裕を持って受け止めてそう言いかけたランドールの首筋に冷たい剣が押し当てられる。
「だったら僕と遊んでくださいよ。」
 隙を見て距離を詰めていたアレクシスが、普段の温厚な彼からは想像もつかない冷たい視線と声をランドールにぶつけた。
ランドールはアレクシスの様子に苦笑すると、スルリと消えるようにアレクシスの剣の間合いから抜け出した。その手にはいつの間に奪い取ったのか、先程までアレクシスがつけていたマントが握られていた。