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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 2 御前試合

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 リュリュを探して城の中を歩いていたジゼルは、意外な所でリュリュを見つけた。
「あんたたち、最近本当に仲がいいわね。」
 城の中庭の木陰で木の幹に寄りかかって背中合わせに座って読書をしている二人にジゼルが半ば呆れたような声をかける。
「今日はここに僕が先にいたのに、リュリュが勝手に後から来たんですよ。別に仲がいいという訳ではありません。」
「何を言うかユリウス。そもそも最初にこの場所を見つけたのはリュリュだというのに、この場所の話をした途端に来るようになりおって。」
「ほんと、仲いいわね・・・。」
「仲良くなんかありません!」
「仲よくないのじゃ!」
 息ぴったりのタイミングで反論をしてくる二人の様子に軽く肩をすくめて、ジゼルが薄く笑った。
「・・・息までピッタリのくせに何言っているんだか。まあ、ユリウスも一緒に居たのなら丁度良かったわ。お客様が見えられているから、今晩少し特別な席を設けるの。その夕食に、二人にも出席してほしいってアレクが言っているのだけどどうかしら。」
「お客様というはどういった方なのですか。」
「ルチアさんって言って、ソフィアのお母さんで、あたしの育ての親でもあるのよ。」
「ふむ。ということはソフィアの母上がジゼル姉様の乳母なのですか?」
 リュリュの質問に、少し困ったように笑いながら、ジゼルが首をふった。
「乳母とはちょっと違うわね。文字通り育ての親よ。あたしが生まれてすぐ、お父様がルチアさんにあたしを預けたの。まあ、当時お父様は未婚で、あたしは庶子だったからね。お祖父様がご存命の間は、あたしは城に来ることも出来なかったくらいだし。相当偏見があったみたい。それで、あたしは八歳までルチアさんの所でソフィアと一緒に育てられたの。ルチアさんはシモーヌ伯母様と同級生でね、よく伯母様の話を聞かせてくれたのよ。」
「母様の?」
「ええ。まあそういう人だし、武器商人でもあるから、昔からよくグランパレスにも行っていて、アレクとは昔から結構交流があって面識もあるんだけど、リュリュは会ったことなかったでしょう。伯母様の話もしたいし、いい機会だから紹介してほしいってルチアさんのたっての希望でね。どうかしら?」
「行きますのじゃ!」
 嬉々として手を挙げるリュリュを横目に見ながら、ユリウスが口を開く。
「リュリュが呼ばれた事情はわかりましたが、何故僕まで?」
「さあ、ルチアさんの興味本位じゃないの?エドはルチアさんと気があったみたいで出る気満々だったけど、嫌なら別に強制はしないわよ。」
「いえ、招かれておいて僕だけ出ないと言うのもどうかと思いますし、それに姉さんがあまり妙なことしないように見張っておかないといけませんから。」
「わかったわ。じゃあ、あたしからアレクに伝えておく。それじゃ、邪魔したわね。あ・・・そうそう。」
 去り際に振り返り、ジゼルが思い出したように振り返る。
「怖ぁいお姉さんが常に見張ってるみたいだから、あんまりイチャイチャしないほうがいいわよ。」
 二人がジゼルがそう言って指した方を見ると、木の影からアンジェリカのメイドがこちらの様子を伺っていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「ま、そんなわけだから仲良くするのはいいけど、ほどほどにね。ユリウスが一線を越えようとしたら叩き斬るとか言っていたお兄さんも居たから。」
「だから僕らはそんなんじゃないですって!」
「そうじゃ。全く、皆邪推ばかりしおってからに。リュリュとユリウスは恋仲などではなく、お互いを高めあうためのライバル関係だと言うのに。」
「ちょっと待て。それだと僕が君と同レベルみたいじゃないか。」
「誤解するではない。ユリウスのレベルが低いといっているわけではないぞ。リュリュのレベルが高すぎるという話なのじゃ。」
「あんまりフォローになっていないわよ、リュリュ。」
 ふと、なにげなく先程までアンジェリカのメイドが居た方に視線を向けたジゼルが、彼女が木の影に居ないことに気がつく。
「・・・どうしたんですかジゼルさん。」
「ん?ああ、なんでもないわ。何か違和感があるんだけど。ちょっと調べてみないと何とも言えないわね。それより今日はこの後雨が降るらしいから、もう室内に移動したほうがいいわよ。」
 ジゼルに言われてユリウスが空を見上げると、確かに先ほどまでの青空は隠れ、灰色の雲が空を覆い始めていた。
「そうですね。じゃあリュリュ、移動・・・。」
 とそこまで言いかけて、ユリウスは口をつぐんだが、ジゼルはそんなユリウスの様子を見て、軽く笑う。
「別にごまかそうとしなくていいわよ。あなた前に妹が欲しいって言っていたものね。せっかくこんなに可愛い子が居るんだから、思う存分可愛がってあげなさいな。」
「く・・・い、行くぞリュリュ。」
 クスクスと笑い続けるジゼルの前から逃げるように顔を真赤にしてユリウスが歩き出すが、その歩みはリュリュの次の一言で止められた。
「はいなのじゃ、お兄ちゃん。」
「お・・・お前・・・。」
「・・・なんての。そうかそうか、ユリウスはリュリュを妹にしたかったのか。まあ無理もないのう。リュリュは可愛いからのう。愛らしいからのう。良いぞ良いぞ。思う存分可愛がるがよかろう。」
「く・・・もう僕についてくるな!」
 大きな声でそう言うと、ユリウスは肩を怒らせて城内へと消えていった。
「むぅ・・・ちょっと調子に乗りすぎてしまったかのう。」
「大丈夫でしょ。どうせ夕食の時には機嫌も直ってるわよ。さ、リュリュも早く城内へ。風邪をひいてしまったらルチアさんの話を聞きに行けないわよ。」
 そう言ってジゼルはリュリュを連れて城内へと入った。