小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

グランボルカ戦記 2 御前試合

INDEX|23ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 



 エド達がルチアを連れて城に戻ってくると、丁度自室から出てきたアンドラーシュと出くわした。
「おー、アンドラーシュじゃん。久しぶりー。」
「げっ、ルチア・・・。」
「ああっ?ルチア先輩だろ?」
 ルチアはそう言ってアンドラーシュを睨みながら、おもむろに彼のふくらはぎを蹴った。
 いきなり繰り出された腰の入ったローキックの威力に、アンドラーシュはたまらずしゃがみ込んで涙目でルチアを見上げる。
「あたしは、あんたの姉の同級生なんだから先輩だって、昔っから何度も何度も言っているよな。ほら言ってみ、ルチア先輩って。」
「・・・る、ルチア先輩、今日はいったい何のご用でしょうか。」
 口元をひくひくとひきつらせながらアンドラーシュが訊ねるが、ルチアはそれには答えずおもむろに彼の髪を掴んだ
「ていうかさ、前に会ったときも言ったと思うけどこの鬱陶しい髪切りなさいって」
「先輩には関係な・・・いだだだっ」
 反論しようとしたアンドラーシュの髪をルチアは容赦なく引っ張った。
「関係無かないわよ。いつまでもそう女々しくあの子の真似されていちゃ気になってしょうがない。」
「・・・」
「ま、いいわ。とりあえず今日のところはあたしが切るのは勘弁してあげる。ただし、次会う時までに切っておかなかったら、あたしがそのうっとうしい髪の毛全部剃ってやるからね。」
「・・・わかりました。」
 顔を引きつらせてアンドラーシュがしぶしぶといった風に返事を返した。
「ああ、そうだアンドラーシュ。あたしあんたにも用事があったんだった。丁度いいからアレクシスのとこに案内してちょうだいな。」
 仮にも自分の上司であるアンドラーシュに対する傍若無人な母の態度に、いままで我慢をしていたソフィアが声を上げた。
「ちょっと、お母さん!いいかげんにしなよ。ワガママばっかり言ってアンドラーシュ様が迷惑しているでしょ。」
「いや、いいのよソフィア。アタシも丁度ルチア・・・先輩と話したいことがあるしね。というわけで、あなた達はもう行っていいわよ。二人ともたしか確か今日はお休みの日でしょう。こんなところにいないでちゃんとリフレッシュしてきなさい。」
「でも・・・」
「いいから。ちゃんと休むのも大事なお仕事よん。」
 ソフィアは最後まで心配そうな、申し訳なさそうな顔でいたが、エドに促されてその場を去っていった。
 エド達が廊下を折れて完全に見えなくなると、二人はアイコンタクトを交わしてうなずき合った後で、今しがたアンドラーシュが出てきた彼の自室へと入った。
「で、まだ気づかれてないんだろうね。」
「もちろん。誰にも気づかれてないわ。リュリュにも、アレクシスにもね。」
「そうかい、ならいい。あたしも出来る限りの手伝いはするけれど、ずっといっしょに居られるわけじゃない。最終的に鍵を守れるのはアンタたちしかいないんだから、しっかりおやりよ。」
 そう言って笑うと、ルチアはアンドラーシュの胸板を拳で軽く叩いた。
「しかしあんた相変わらず良い筋肉しているね。・・・顔だっていいのに、なんだってアンタは結婚しないのさ。まだまだそっちのほうの感情が枯れたってわけでもモテないわけでもないだろう。」
 ルチアのその言葉はまるで彼女がアンドラーシュの姉であるかのような、彼のことを心底心配しているような、そんな慈愛に満ちたものだった。しかしアンドラーシュはそのルチアの感情を知ってか知らずか。肩をすくめて、軽く受け流す。
「・・・いいんだよ。俺にはジゼルがいるし、これ以上は望むべくもない。まあ、ルチアが結婚してくれるというのなら、考えないでもないけど。」
 冗談交じりに受け流されたルチアも、特に気にするでもなく、調子をあわせて嫌味を言う。
「はっはっは。アンタと結婚なんて考えたくもない。ただね、そう遠くない日にジゼルだって誰かのところへ嫁いでいくんだからね。確か、前に聞いた・・・グレンだっけ?そいつに取られてから寂しいって言って泣いたって知らないよ。」
「それはないよ。」
「なんでそう言い切れるのさ。」
「・・・グレンは前の戦いで死んだ。イデアの街を守る戦いでね。」
「じゃああんたの所の唯一の戦死者っていうのは、彼なのか。・・・ジゼルは辛いだろうね。」
「ああ。あんまりそういう所を見せてくれないけど。」
「お、案外本気でへこんでいるね。」
「当たり前だろ。娘が辛いっていうのに、父親の俺が何もしてやれていないんだから。」
 そう言って深くため息をつくアンドラーシュを見て、ルチアはケラケラと笑った。
「あんたが父親ねえ。やっぱり何か変な感じ。」
「まあ、確かにあんまり似合わないし、ちゃんと父親の役目を果たせているかどうかなんてわからないけど。」
「あはは、そんなことはないさ。あの女にだらしなかったアンドラーシュ坊やがこれだけ頑張っているんだ、大したものだよ。こんなにいい父親になるんだったら、あの時あんたのことふらなきゃよかったかもね。」
「あら、さっきも言ったけど、あたしの方は今でも大歓迎だけど?」
「ばーか、社交辞令を本気にするんじゃないよ。」
「そりゃ残念。」
 そう言ってアンドラーシュは苦笑交じりに肩をすくめた。

「ルチアおばさんが来ている?」
「うん、アレクシス君が武器の注文をして、それを届けにきたみたい。」
 たまたま通りかかったレオを捕まえてソフィアがルチアのことを話すと、レオの顔色もみるみるうちに悪くなった。
「ま、まあ別に叱られるようなことしてねえしな。あの事がバレたとかじゃねえんだし。」
「それが・・お母さんにバレちゃって。」
「・・・お前また余計な事を言ったのか。」
 レオに睨まれて、ソフィアは手と首を振って慌てて弁解する。
「わ、私はごまかそうとしたんだよ。だけどエドが口を滑らせちゃって。私たちが別々の部屋で寝起きしてるって事を言っちゃったんだよ。」
「マジかよ・・・おいおい頼むぜエド」
「確かに口を滑らせたのは私だけどさ、でも普通は親って、嫁入り前の娘が男と同居するのって嫌がる物なんじゃないの?」
 エドが至極もっともな疑問を口にして首を傾げる。
 二人はエドの疑問にすぐには答えず、どうしたものかと顔を見合わせてから二人同時にうなづいた。
「確かに嫁入り前ならそうなんだろうけど・・・俺達、実は結婚しているんだよ。」
「え・・・ええええっ?結婚?」
「馬鹿、声がでけえよ。結婚つってもセロトニアでの形式上の物でさ、この国では二人とも独身だよ。」
「ほ、本当なのソフィア。」
「うん。・・・わたしって昔から体が大きいし、鈍臭いから男の人とあんまり縁がなくて。それで見かねたお母さんが相手を捜してきてくれたんだけど、その相手って言うのが・・・。」
 ソフィアは思い出したくないとばかりにそこで首を振って黙り込んだ。
 黙ってしまったソフィアに代わってそこからはレオが言葉を引き継いだ。
「調べてみたら、まあ、ひどい奴でさ、ソフィアのほかに・・・えっと・・・そうそう、八人だ。八股とか、タコかって話でさ。んで、そのひどい縁談をぶち壊すために、色々あって俺がソフィアを嫁にもらうってことで、なんとか話を収めたわけだ。・・・って何ニヤニヤしてんだよエド。」