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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 2 御前試合

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「あたしはソフィアの母で、ジゼルの育ての親のルチアってんだ。いつもうちの娘達が世話になっているね。」
 顔立ちはソフィアに似ているが、大柄なソフィアに対してかなり小柄なルチアは、店に入るなり注文したエールを一気に煽った後で、ソフィアの隣の席でそう言って豪快に笑った。
「あ・・・いえ。こちらこそソフィアやジゼルにはお世話になってばかりで。」
 エドが頭を下げると、ルチアは顔の前で手をパタパタと振って笑う。
「そういう社交辞令はいいって。あの何もできないジゼルと、このバカ娘がまともに人様のお世話なんかできるわけ無いんだから。」
「お母さん酷いよぉ、わたしはちゃんとお仕事してるもん。」
「嘘言うんじゃないよ。ドジばっかりだってレオやジゼルからの手紙にもちゃんと書いてあったんだからね。」
「うぅ・・・レオくんめ。ジゼルちゃんも言いつけないって言ってたのに酷いよ・・・。」
 ルチアにピシャリと言われて、ソフィアは恨めしげにレオとジゼルの名をつぶやくと、頬を膨らませてそのままうつむいた。
「あはは。仲がいいんですね。自己紹介が遅れました。わたしは・・・。」
「知ってるよ。あんたがエーデルガルド・プリタ・リシエールだろ。レオやソフィアの手紙だけじゃなくジゼルやアレクシスからの手紙にも書いてあったからね。」
 エドの自己紹介を待たずに、ルチアがエドのフルネームを言い当てる。
「え・・・アレクともお知り合いなんですか?ルチアさんって一体・・・。」
「あたしはレオの母親とアレクの母親とは学生時代に懇意にしていてね。それが縁でちょこちょこグランパレスに遊びに行ったりしていたのさ。まあ、この子は船に弱いからあんまり一緒に行かなかったけどね。」
「・・・ってことは、ソフィアって前からアレクと知り合いだったの?」
「うん一応ね。わたしはあんまりグランパレスには行かなかったけど、レオくんはお父さんの仕事で、一緒にしょっちゅうグランパレスに行っていたからアレクシス君とは結構仲がいいんだよ。」
「ふぅん・・・やっぱりわたし、知っているようで皆のこと全然知らないんだな。」
「まあ、人間同士なんて、お互いわかっているようでもわかってないなんてこと結構あるからね。実際、レオの父親はその典型みたいなものだし。ほんと、あいつだけは昔から何を考えているんだか・・・。」
「レオのお父さん?」
「お母さん、レオくんのお父さんのこと悪く言わないで。」
「はいはい。・・・ごめんエド。今のなし。忘れて。」
 そう言って手を合わせて謝るルチアの姿は先程のソフィアとよく似ていた。
「レオのお父さんの話もちょっと聞いてみたかったですけど、何か事情がありそうですし仕方ないですね。それで、ルチアさんはどうしてこの街に?」
「アレクシスに武器やら防具やらの調達を頼まれていてね。その商談に来たのさ。本当はグランパレスに行くはずだったんだけど、予定よりも早く計画が動き始めちまったから、慌てて大回りしてアミサガンにきたってわけ。」
「じゃあ、ルチアさんは船で働いているんですね。あ、もしかしてさっき入港してきた大きな船ですか?」
「船で働いているというよりはあたしはセロトニア武器商会の代表でね。あの船では船長をしてるんだ。まあ、あそこまで来ちゃえばもうやることも殆どないから、入港手続きがてら先遣隊の船に乗っかって街に遊びに来ていたんだけど。いやあ、でも先に来て正解だったわ。もし船にいたら可愛い娘と会いそびれるところだったもんね。」
 そう言ってニヤニヤとした視線をソフィアに向ける。
「な・・・何のことかな。」
「とぼけるんじゃないよ。あんたさっき船を見て逃げ出そうとしていただろう。そんなにあたしに会いたくなかったって事?何かあたしに知られるとまずいことでもあるの?」
「う・・・。」
「ああ、それでさっき何日か城を開けるって言っていたのか。」
 エドがやっと納得がいったというように手をポンと合わせた。
「エド!」
 身を乗り出してエドの口を塞ごうとするソフィアの肩を掴んで、強引に引っ張り戻してルチアが笑った。
「いやあ、エド。あんたいい子だね。いい子ついでに聞かせておくれよ。この子、レオと上手くやっているかい?手紙には、それはもう上手くやっているって書いてあるんだけど、実際どうなのかと思ってさ。」
「上手くやっているって・・・まあいいコンビだと思いますよ。」
「そうかいそうかい。ならアタシが孫の顔を見られる日も近いかな。」
「え・・・?」
「え・・・?って、何でそんな不思議そうな顔をしているんだい?寝屋を共にしているなら子ども位できるだろ。」
 ルチアの言葉を聞いて、エドの頭はクエスチョンマークでいっぱいになった。
「ちょ・・・エド。しーっ」
 ソフィアがエドに余計なことを言わないようにジェスチャーを送るが、エドには届かず、ルチアの言葉を聞いたエドは笑いながら手と首を横に振った。
「いや、それは無いですよ。だって、ソフィアの部屋とレオの部屋って別々ですもの。」
 エドの言葉を聞いてルチアの表情が笑顔のまま固まった。
 ソフィアは、がっくりとうなだれたまま顔をあげようとしない。
「ソフィア。」
「・・・はい。」
「あんたたち、あたしに嘘ついたね。」
「・・・はい。ごめんなさい。」
「ってことはレオの奴も嘘をついていたって事か。・・・あのクソガキ。」
 忌々しそうにレオの名を呼びながら顔を歪めてテーブルを拳で叩くルチアの様子を見て、エドが身を乗り出してソフィアに耳打ちをする。
「ごめんソフィア。もしかして私、余計なこと言った?」
「うん・・・。これで多分レオくんはお母さんに殴られると思う。」
 ソフィアはそう言ってため息を着くと肩を大きく落とした。