グランボルカ戦記 2 御前試合
翌日。
早々に授業を切り上げると、二人はユリウスを探して城の中をウロウロしたが、どうやら今日も彼は城にはいないらしい。
「きっとまたあの広場に居るに違いないわ。」
キャシーの勘を信じて例の広場へと向かったものの、今日はユリウスもソフィアも来ていなかった。
「むぅ・・・二人共どこへいったのでしょう。」
「城にいないのは確認済みだし、もう少し街を回ってみましょう。」
「わかりましたのじゃ。」
それから二人は日暮れ近くまで街中を探して歩いたが、結局ユリウスを見つけることが出来なかった。
結局とっぷりと日がくれて、二人が諦めて城へ戻ろうと川沿いの道を歩いている時だった。川沿いの公園ベンチにユリウスが座っているのを見つけた。
「おおっ、あれはユリウスではありませんか、お師匠。」
「ふふふ、思った通り、隣に誰か居るわね。まあ、どうせソフィアなんでしょうけど。・・・一応確認しましょうか。」
「し、しかしこんな暗い中、あんな遠いところの様子をどうやって。」
「こんなこともあろうかと、お城から遠眼鏡を・・・あれ?どこにしまったっけ。」
「お師匠、これではありませんか?」
「ああ、これこれ・・っと。」
キャシーはリュリュがカバンの中から見つけ出した遠眼鏡を覗き込んだ。
月と星の明かりだけで、薄暗くはあるものの、川の水面の光も手伝って、なんとかユリウスの顔が視認できた。
そのユリウスの顔は照れているのか、暗い中でもわかるくらいに赤くなり、目が泳いでいる。そして、そのユリウスと向かい合っている女性はとても真剣な目をしてユリウスを見つめていた。
「え・・・嘘。」
「ど、どうしたのですかお師匠。顔色がすごく悪いですが。」
「う・・・うん。大丈夫よ。それよりリュリュ。気を強く持ってね。」
そう言ってキャシーは遠眼鏡をリュリュに渡した。
キャシーから受け取った遠眼鏡を除くと、リュリュの顔からもみるみるうちに血の気が引いていく。
「あ・・・アンジェ・・・?」
「や、やっぱりそうよね。あれ、アンジェリカさんよね。」
「う・・・うむ。これがバレたらユリウスの奴、デールに血祭りにあげられてしまうのではないじゃろうか。」
「デールさんって、アンジェリカさんのこと神様か何かみたいに敬愛してるものね。」
「・・・そ、そうじゃお師匠。デールをリュリュ達で見つけて間違ってもここに来られないよう足止めをしよう。そうじゃ、それがよい、そうしよう。」
「そうね。ユリウスのしていることはほめられたことではないけど、とりあえずこの場を切り抜けるにはそれしか無いわ。」
二人はそう言って大急ぎで城に戻ったが、その日、結局デールを見つけることは出来なかった。
作品名:グランボルカ戦記 2 御前試合 作家名:七ケ島 鏡一