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土産

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 おおかた着替えが終わった頃、ボクの腰にキミの腕巻きついてきた。
「あ、びっくりした…どうしたの?」
「ううん、なんにも」
「仕度、できたの?」
「うん」
キミの行動に、少し呆れながら振り返ると、チェストの陰に何かを見つけた。
 ボクは、キミの手をほどき、それを摘みあげた。
「あ、これ…」
「あ、あった」
それは、キミが失くしたと言った もう片っぽの柔らかな毛糸の手袋。
「汚れちゃってるね」
「掃除をさぼってたからな。ははは…はぁ」
「これこれ」

――やっぱり、引き合っていたね。
――ずっと 対でいたんだもんね。
――そして、ボクとキミも たぶん 惹き合ってるよね。

 ボクは、その手袋を机の上の手袋の横に置いた。合わせた。重ねた。
やっぱり横に置いた。
「じゃあ行こうか」
キミは先に玄関へ向う。ボクは、リビングのドアを閉めながら、机の上の手袋を見た。

 キミの事情。
キミが戻ってこなかった理由など、考えたことはなかったけれど、雪解けの季節は来る。
それからだって、いいのかもしれない。
きっと帰る理由をあれこれ考えたに違いない。 

床に置いたままのお土産。

両手が揃った手袋。

ただそれだけなのに……。

     
     ― 了 ―
作品名:土産 作家名:甜茶