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土産

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朝から胃の辺りがぐいっと掴まれたように苦しい。
昨夜のアルコールが残っているのか。いや、久し振りに飲んだとはいえ、発泡酒と酎ハイグレープフルーツのレギュラー缶を各一本。たぶん、二日酔いというわけではない。
 カーテンを開けた窓から、明るく陽が差し込んだり、陰ったり。雲の流れが速いようだ。
その繰り返しを原稿用紙に感じながら万年筆を走らせるボクが居る。
 ボクは、机に向ったまま振り返れずにいる。胃が、胸が、鼓動が落ち着かない。
ボクの背中の後ろ……キミの気配が……はっきり伝わってくるキミの存在がある。
キミが、来るとちょこんと座っている場所。フローリングの床の敷物の上。卓袱台(ちゃぶだい)の前に今、キミが居る。
 陽射しのチラつきが、だんだん疎ましく感じられた。ボクは中腰で腕を伸ばし、キミと選んだ奇怪な模様のカーテンの端をつかむと一気に閉めた。
部屋を暗くするほど、遮光効果ないカーテンは、キミの表情を見えなくはしない。
もちろん、ボクの表情もキミにわかってしまうだろう。
 ボクは、椅子に腰掛けたまま、振り返る。部屋の照明を点け、キミの姿を確かめた。
キミの視線が、まっすぐボクの瞳に届いた。
「おか」「ただいま」
キミの声は、はっきりとボクの声に重なった。
「ああ、おかえり」
 ボクの頭の中は、尋ねたいことばかりが浮かび、その言葉に思考のほとんどが使われている。
それを取り除かなければ、原稿に載せる言葉が入り込めないだろう。
だが、こういうとき、何から話せば良いものか……。
作品名:土産 作家名:甜茶