DESTINY BREAKER 一章 4
何事だろうかとは思ったが特に関心はなかったので無視をした。
すると転校生はタッタッタッと軽い足取りで教室の一番後ろの窓側の席、すなわち私の席に向かって走ってくると、眠りにつこうとしていた私に向かって飛び掛ってきた。
私はその衝撃で椅子から放り出され床に体ごとたたきつけられた。
「私だよ!桜花ちゃん!覚えてる!?」
突然の出来事と衝撃で心臓が飛び出んばかりに驚いていた私は、彼女の顔を見ても始めは誰だか皆目検討がつかなかった。
「誰?」
彼女は一瞬泣きだしそうな顔をしたが、精一杯の笑顔で
「半年前に助けてもらったんだよ。桜花ちゃん。」
「半年前?・・・ってあの女の子!?」
まさか同い年だったとは、てっきり年下とばかり思っていたのに。
自分よりも二まわりくらい小さい彼女を見て私は懐かしさと恥ずかしさを感じた。
それにしても何で名前まで・・・いや、知っていてもおかしくないか。
「会いたかった!ずっと会いたかった!」
彼女は私の胸に顔を擦り付けている。
まるでマーキングする犬のようだと私は思った。
「感動の再会はこのくらいでいいかな?」
恥ずかしそうに担任が言うと、私は周りを見渡した。
クラス中の視線が私に集まっている。
彼女もそれにやっと気づいたのか、顔を赤面させいそいそと恥ずかしそうに教壇の上に戻っていった。
こほんと一息、担任の咳が場の空気を仕切りなおし目で彼女に自己紹介をするように勧めた。
「はじめまして。先日この町に引っ越してきました草薙夏樹といいます。どうか宜しくお願いします。」
先刻のことであっけにとられていたクラスの生徒たちだったが、気を取り直し女子生徒からは拍手が男子生徒からは歓声が送られた。
「それじゃあ草薙君は千条君の隣の席に座ってくれ知り合いだったら何かと話したいこともあるだろう。これから宜しくな。千条も草薙のことをよろしく頼むぞ。」
と担任が軽く目配せをしたので軽く頭を縦に動かすことで反応した。
「はい。宜しくお願いします。」
夏樹は担任とクラスメイトを交互に見て再び軽く会釈した。
そして席を目指して歩いてくる途中で私のにしか聞こえない声で
「桜花ちゃんとは、にどめましてだね。大好きだよ桜花ちゃん。」
と言って横の席に座り、私の方を見て微笑んだ。
「自分のことが見えないのはなかなか不便なもんだね。」
私は少し不満げに言った。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 4 作家名:翡翠翠