DESTINY BREAKER 一章 4
耳をふさいでもきこえてきた。
聞きたくないと泣いても叫んでもきこえてきた。
手元にあった鉛筆を耳に突き入れ、鼓膜を突き破ろうとした。
しかし、できなかった。
怖くて躊躇ったわけではない。
本当は気づいていた。
そんなことをしても聞こえるのだと、視えてしまうのだと、無駄だとわかっていた・・・。
その日も、私は唄をきいた。
力のせいでたくさんのものを失ったあの日から私は唄に何の感情も感心も持たないようにした。
人に会うのが怖くなった。
外に出るのが怖くなった。
家族も拒絶するようになった。
喪失と無慈悲な時間は私という入れ物を空っぽにした。
「今日・・・朝・・・女の子が・・・私の知らない子・・・道・・・赤い車・・・。」
断片的なものだった。
手を握ってみる。うまく握れなかった。
そういえば、最近何も食べていない。
部屋の前に置かれたご飯は全てゴミ箱に捨てていたから。
体が衰弱すれば、生きる意志のない心も衰弱する。
私は精神が弱っていれば力も弱くなることを知った。
それでも理解することはできた。
「今日の朝、私の知らない女の子が道で赤い車に轢かれる。」
知っている道だ。だけどそれがどうしたっていうの?
私には関係のないことだ。
仮に私が何かをしたところで人は私に恐怖するだろう。
それなら何もしなければいい。
私は目を閉じた。この世界から逃れるように目を閉じた。
私は暗闇に自らを投じた。意識は闇に沈んでいった。
『・・・ぬのか?』
闇のなかからそれは聞こえた
「誰?」
『救わぬのか?』
「なにを?」
暗闇から聞こえてくるそれは不思議と怖いものではないと感じた。
『あの少女を救わぬのか?』
「私に何を求めているの?」
私は今日起こるであろう未来を思い出した
少女は泣いている。
まもなく赤い鉄の塊に命を喰われてしまうだろう道の上で
「私の力はあの子の未来を奪ってしまう」
もう嫌だこんな力
『それは違う。』
「何が違うというの!
力のせいで友達は私を怖がった
力のせいで友達が傷ついた
力のせいで私はみんな失った!!」
声を振り絞った。
しかし返ってきた言葉は極めて冷静だった。
『それは全てそなたの望んだことか?』
「そんなことない!
私はそんなこと望まない!」
みんなに教えたかった。
明日は天気がいいから気持ちがいいねって
怪我をするからあぶないよって
作品名:DESTINY BREAKER 一章 4 作家名:翡翠翠