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キラーマシン・ガール 前編

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 その夜、僕は激しい痛みに襲われた。
 左肩と左の腿の付け根が異様な熱を放っている。意識を失い、痛みでまた目が覚める。それを空が明るくなる時間まで繰り返した。

 「おはようございまーす!あっさですよー!!起きてー!」
 陽気な大音量ボイスと共に激しく体を揺さぶられ目を覚ました。朝だ。最悪の寝覚めだった。
 「……あなたは?」
 僕は半分眠ったままの頭で、突然現れたナース服姿の女に質問した。
 「私?私はね、向井日向っていうの。八王子さんに唯史くんのお世話を任せられた看護婦さんですよー」
 「元気ですね……」
 「唯史君は元気なさ過ぎ。怪我人なんだから、もっと元気ださないと怪我に負けちゃうよ!死にたくないでしょ?ね?ということで朝食を食べよう!」
 日向が壁際に寄せられた車輪付きのベッドテーブルをこちらに移動させる。その上には、料理の盛り付けられた皿が載ったトレイが置いてあった。この時、僕は自分の体が動くようになっていることに気がついた。
 「お残しは許しまへんで」
 僕が朝食を食べている間も日向は途切れなく騒ぎ続けた。
 「そこで味噌汁だ!いけ!」
 「トマト!残すな!焼き払え!」
 などと急き立てられながら、僕は落ち着かない気分で朝食を口に運んだ。朝食を終えても彼女の勢いは衰えることはなく、しばらくの間彼女の世間話に付き合わされることになった。
 「向井さんと会話していると大幅に体力を削られます」
 「まだ大した量話してないじゃない!唯史くん適当に相槌打ってるだけだし!甘えるな!」
 「もう四日分は喋りました。僕は一旦宿屋に戻って体力の回復に専念します。アイテムを消費したくないのでもう僕に攻撃してこないでください。それでは、解散」
 「人のことをダンジョンに生息してるモンスターみたいに言わないでよー!」
 「向井さんのやかましさはボストロール級です」
 僕は日向に背を向けて掛け布団を頭まですっぽりとかぶった。
 「失礼な態度だなー。唯史君が眠っている間、身の回りのお世話したのは誰だと思ってるの?」
 「それに関しては……まぁ、ありがとうございます」
 僕は布団から顔を出して頭を軽く下げた。
 「無抵抗な唯史君の服をムリヤリ脱がせて、濡れタオルで体を優しく拭いてあげたりしてあげたんだから。他にも、他にもいろんなこと……して、あげたんだから……」
 「僕の下半身を見て顔を赤らめないでください!」
 意外にうぶな人だった。