アンドロイドの恋人
僕は彼女を愛し、彼女も僕を愛してくれていた。だから、二人が離れ離れになるなんて、絶対に許されるようなことじゃない。
テスト期間が終了したと告げるメールは、ある日突然送られてきた。
今まで業務をおろそかにしたことはない。僕はただ、彼女に関する詳細な情報を毎日送り続けていただけで、本社の機嫌を損ねるようなことをした覚えはなかった。
だからこれは単純に、ビジネス上の問題だった。必要なデータが揃ったので、これ以上A001を僕に貸し出す経済上のメリットがなくなった。
それだけの話なのだ。
本社から派遣されたスタッフはすぐにやってきた。またあのワゴン車に乗ってきて、数名の男たちが玄関から入ってくる。
「A001、いくぞ」
乱暴に彼女の肩をつかむ男たちに思わず目を背けたA001と、僕は目があった。
彼女の切なそうな目を見て、僕は思わず叫んでしまった。
「やめろ!」
時間が停止したような感覚だった。彼女を連れ去ろうとする男たちは僕が叫んだことに驚きを隠せいないようだった。
僕は夢中で走った。彼女の手をつかみ、男たちを振りほどいてそのまま逃げた。
お互いに手を取り合ってアスファルトの道路をひたすら走り続けた。後ろをチラッと振り返ると、男たちが携帯電話でどこかに連絡しているのが見えた。
「A001!」
「はい、ご主人様!」
走りながらのせいか、彼女も僕も声を荒げている。
「結婚しよう!」
「はい、ご主人様!」
その時の彼女の表情は、いつも以上に輝いて見えた。