アンドロイドの恋人
――事の詳細を本社を報告した私、つまりA001は契約金が指定した口座に振込まれたことをパソコンで確認した。目の前には本社の役員がいる。
「確かに入金は確認しました。これでテスト契約は終了、でよろしいですね?」
「ああ、君のおかげで素晴らしい成果がとれた。ただ、最後の行動はいただけない。まさか本社の意向に逆らって君を連れて逃亡しようとするとは」
「人工知能だから、じゃないのですか?自意識の発達が予期しない行動をアンドロイドに促した可能性があります」
「なるほど。そのことを研究所に伝えるよ。いかなる事態であっても規約を守るようにプログラムし直さないと」
「では、私はこれで失礼します」
私は一礼すると振り返り、退室しようとした。その部屋の脇には、今まで私とともに時間を過ごしたアンドロイド、成人男性の形を模した人型の恋人がいた。
その眼蓋は現在、閉じられている。やがて目を覚ます頃には今回のテスト期間に関するデータは全消去され、プログラムし直された彼と再び付き合う可能性がある。
次はどのような設定にしようか。幼馴染か、転校生か、年上のお姉さんか。
本当に研究意欲が掻き立てられる対象だ。