@manami_hijikata
【飯塚】
俺が土方と初めて会ったのは中学の二年のときだった。
俺は土方のことを知っていたが、向こうは俺のことは知らなかった。当たり前のことだが。
土方といえばでかい女のことだった。でかい女といえば土方でもあった。
まぁ、でかいっていっても、女の割にはだったし、俺より低かった。
あぁ、俺より低かったはずだ。
どっちでもいいか。今現在でいえば、俺の方が背が高いんだし。
とにかく、俺が土方と初めて会ったのは二年半ほど前のことで、俺が一方的に知っていた。
だから、俺が殴られたのは自明の理だった。
「よぉ、お前が土方だよな。背が高いって評ばn」
「死ね」
俺が目を覚ましたのは放課後の保健室だった。
俺と土方の出会いはそんな感じだったが、このことが逆に俺と土方の仲をより強くした要因になった。
簡単にいえば、雨降って地固まるってやつだ。
まぁ、まさか、地面を固める方法が『土方を男として扱う』だとは思いもしなかったけどな。
土方は『背が高い女』と見られるのが嫌いだった。
訂正、女扱いされるのが嫌いだった。
それはちょうど良かった。そもそも俺は土方を男として見ていたから。
「殴ってごめん」
俺が土方に話しかけた理由に返ってきた言葉だ。
「いいアッパーだったぜ」
夕日の差す河原で殴りあった後の顔で、俺はサムズアップをした。
「お前とは親友になれそうだ」
男女の友情はないとか聞くけども、俺と土方の間には友情しかなかった。
俺は土方を男と思っていたし、土方は女が好きだったからだ。
土方には俺の恋路の手伝いをしてもらい、俺は土方の友達になった。
作品名:@manami_hijikata 作家名:ぶちょー