@manami_hijikata
【愛田】
私は土方さんが好き。
背が高いところが好きで、ちょっと短めの髪も好き。
男子相手に怯まずに立ち向かえるところも好きで、普段はクールだけど、ときどき熱くなるのも好き。
でも、私は土方さんに恋愛感情を持っているけど。でも、この想いを伝えることはない。
それは、私が女で土方さんも女だから。
それは、私が土方さんを想う以上の想いを、土方さんが別の人に抱いているから。
その人もまた、私が土方さんを想う以上の想いを、土方さんに抱いているから。
だから、私はこの想いを伝えることはない。
伝えられるはずがない。
「委員長」
真っ白なプリントが差し出される。
それを受け取って顔を上げると、思い人のクールな顔が見れた。
「それ、今日までだったよな」
真っ白なプリントを裏返してみると、一番上に『進路調査票』と太くあった。
「あ、うん」
「じゃ、よろしく」
細くて大きい背中が去っていく。
自然とその姿を目で追ってしまう。
教室の入り口で待っていた人に声をかけた。嬉しそうな顔が私の目に焼きついた。
土方さんを熱くさせる人。
二人の姿が見えなくなっても、私はしばらく目を動かせなかった。
どのくらいそうしていたのだろう。
首が変な位置で固定されてしまうと思った私は、それを下に向けた。
そこには土方さんの進路調査票があった。
『特になし』が3つ並んでいた。
作品名:@manami_hijikata 作家名:ぶちょー