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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 1 紅と蒼の姫

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 村で農作業に従事していたころはそういうことはなかったのだが、 この城の任官試験に合格して兵士となった後は、複数のメイド達から恋文をもらったりしている。当然その気のないオリガはすべてお断りしているのだが、その誠意をもって答えてくれる姿勢に、本気で参ってしまっているメイドもいるくらいだ。
「私だって普通に恋したいのになぁ・・・。」
「だ、大丈夫だよ。オリガちゃん美人さんだもん。きっと素敵な男の人が現れるよ!ファイトっ!」
「・・・ありがとう。」
 両手を握って励ますソフィアにオリガは苦笑しながらそう返した。とは言え、毎日毎日むさ苦しい鎧をつけ、槍を振り回すことを生業にしている自分に、ソフィアの言うような素敵な男の人などという者が現れるのか。そんなことを考えると、オリガは憂鬱な気分になってきて、もう一度大きなため息をついた。
「んー・・・でも、案外、アリスちゃんってオリガちゃんの事が好きなのかも。」
「何でそうなるの・・・」
「だってだって、アリスちゃん最初から私のこと嫌っていたわけじゃなかったんだよ。最初は笑っていたし、失敗しても不器用な妹を見ているみたいで懐かしいって言ってたんだもん。でも、オリガちゃんがこのお城の中で女の子にもてるって話をしたらだんだん不機嫌になって・・・あ、もしかして二人ってお付き合いしてたりするのかな?」
「付き合ってないよ・・・私は本当に普通に男の人と恋愛したいんだってば・・・。」
「あら、案外いいものかもしれないわよん。女同士っていうのも。」
「いや、だから私は・・・・・・アンドラーシュ様!」
 最初はソフィアだと思って対応したオリガだったが、すぐにそれが自分の主人であるアンドラーシュ・モロー侯爵であることに気づくと、姿勢を正して向き直った。
「お、お戻りでしたか。大変失礼をしました。」
「別に、アタシはそういうの気にしないわよん。それよりも。おかえりなさい、オリガ。アミサガンからここまで、よくリュリュを守ってくれたわね。礼を言うわ。」
 そう言って笑う、自称女装美人のアンドラーシュの笑顔は、中性的な魅力にあふれていて、思わずオリガは彼の笑顔に見とれてしまった。
「さて、それでリュリュにちょっと話を聞きたいんだけど、どこにいるか知らない?」
「あ、リュリュ様なら、アリス・・・いえ、道中共にした旅芸人のところにおります。」
「旅芸人のアリス・・・ふむ・・・それはもしかして。こんな髪型をしたおっぱいお化けかしら。」
 そう言ってアンドラーシュは自分の長い髪をアリスのように頭の横で縛っているように握ってみせ、空いている方の手で胸を模ったジェスチャーをして見せる。
「そうですが・・・ご存知なのですか?」
「・・・まあ、昔ちょっとね。でもま、助けてくれた仲間と楽しく過ごしているところを邪魔するほど危急の話があるわけじゃないしリュリュに直接話を聞くのは後でいいか。代わりにオリガ、貴女が報告してくれないかしら。これからヴィクトルとヘクトールとジゼルを交えて、今後のこの領の身の振り方を考えなきゃならなくてね。」
「わ、私が、でありますか?」
 本来、領主と騎士団長、傭兵隊長で行われるような会議に、オリガのような兵卒が参加することなどありえない。緊張と不安で目を白黒させるオリガの肩を、ぽんぽんと叩きながらアンドラーシュが笑う。
「そ。あんたを信用しての事よ。と、いうか当事者の口から今のアミサガンの話を聞きたいわ。」
「か、かしこまりました。わ、私でよろしければ!」
 オリガはそう言って姿勢を正して敬礼をした。