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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 1 紅と蒼の姫

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「ほう、エドはそんなに強いか。さすがに一介のメイドが城内最強というわけでもないじゃろうし、だとすればこの城の兵は相当な強者があつまっているのう。」
 昨日の市場の一件で、ただのメイドだとは思っていなかったものの、リュリュの城では新入りにもかかわらず城内の御前試合で決勝まで残った腕前を持つオリガが負けたと聞いて、リュリュは俄然エドに興味を持った。
「ええ。強いですね。エド以外にもジゼル様付きのメイドの中には相当な腕前の者もおりますし、傭兵部隊の隊長であるヘクトール殿。この方もリシエール出身なのですが、かなりの腕前でいらっしゃいます。おそらく、一騎打ちとなった場合、ヘクトール殿と騎士団長のヴィクトル様は別格でしょう。」
「ふむ。なるほどのう・・・そう考えると、アミサガンは少々武力が不足しておったのかもしれんな。この城では大分下位になってしまうオリガにかなう者がアンジェしかおらんかったしのう。」
「いえ。あれは組み合わせの関係もありますから、私が特別強いと言うわけではないですよ。アンジェリカ様のブロックには他にも強い方がたくさんおられましたから。」
「だとしても、決勝まで残るのは運だけでは不可能じゃろう。どうじゃオリガ、叔父上の所をやめてリュリュの旗下に入らんか?リュリュとしてはこのままお主に身辺の警護を頼みたいのじゃ。」
 リュリュが真面目な顔でオリガに提案するが、オリガがとんでもないと笑う。
「私は、平民の出身ですよ。ここまでは非常時の事で、リュリュ様をお守りしてきましたが、アミサガンの街でそうだったように、本来はアンジェリカ様のような貴族の方が担うべき御役目です。おそらく今後は騎士団のお歴々や、それこそヴィクトル様が護衛につかれるのだと思います。少し寂しい気もしますが、それがリュリュ様にとっても一番です。私のことなど、お忘れ下さい。」
「むぅ・・・リュリュはオリガが良いのじゃがのう・・・ヴィクトルは前に一度会ったことがあるが、どうもその・・・あの髭がこわくてのう。」
 五十絡みの、いかにも騎士然としたヴィクトルの、いかつい顔と髭を思い出してリュリュが眉をしかめる。
「ああ見えてユーモアのある方ですよ。ヴィクトル様は。」
「だとしても、リュリュとしてはやはりもう少し歳の近い、オリガやアリスが居てくれたほうが・・・そういえばアリスはどうしておるのかのう。昨日城に入ってから姿が見えぬが。」
「ああ、アリスでしたら、来客用の部屋をあてがわれているはずです。丁度私も用事があって彼女の所へ行く所でしたし、もしよろしければ、一緒に行かれますか?」
「そうじゃな。もし本当にヴィクトルがリュリュに付いてしまったらアリスとも会いづらくなるじゃろうし、行ってみるとするか。」
 オリガとリュリュがアリスにあてがわれた客室の前にくると、中からアリスの怒鳴り声が聞こえた。
「何でそうなるんですか!」
「だ、だって・・・・」
「だってじゃありません!」
 会話の内容から察するに、アリスが誰かを怒っているようだ。リュリュの頭の上にはいくつもの?マークが浮かんでいたが、オリガにはアリスが怒っている相手が誰なのか大体見当が付いたらしく、ドアを軽くノックをしながら苦笑を浮かべていた。
「はい。どうぞ。」
 アリスの返事を待ってリュリュとオリガがアリスの部屋へと入ると、部屋の中にはアリスの他に大柄で胸の大きな、襟足の長いボブカットのメイドが泣きそうな顔で立っていた。
「また何かやったの?ソフィア。」
「ああっ、オリガちゃん。」
 そう言いながらソフィアと呼ばれたメイドがオリガに抱きついてきた。
 女性としては大分大柄なオリガと同じくらい大柄なソフィアに抱きつかれてオリガはよろけるが、そこは一応鍛えている兵士。なんとか踏みとどまってソフィアを受け止めた。
「皆が言っていたとおり本当に帰ってきていたんだね。無事でよかったよー。」
「ああ、昨日の夜戻ったんだ。君も元気そうでなによりだよ、ソフィア。」
 そう言って親しげに話をする二人を、アリスは、面白くなさそうに見ている。
「オリガ、随分その子と仲が良いみたいだけど。この部屋の惨状について、貴女の見解を聞きたいわね。」
 アリスに言われて、オリガが部屋の中を見回すと確かにアリスの言うとおり、惨状と言うのが最もしっくりくるような有様だった。
「ソフィア・・・これは・・なんというか、いつにも増して・・・。」
「だって、わたし今日はスカートがこんなんだからうまくできないよって言ったのに、ジゼルちゃんがアリスちゃんの世話をしろって・・・。」
「そのアリスちゃんと言うのも、できればやめて欲しいのだけど。」
 トゲトゲとした口調で言うアリスの言葉に、ソフィアはヒッと小さく悲鳴を上げる。
「そもそも、自分の主人をちゃん付けなどと。どういうつもりですか。」
「ごめんなさいごめんなさい。し、したっけ、オラ、ジゼルちゃんが良いって言ったからそう呼んどるんだし・・・。」
「お黙りなさい!城の設備を壊す、自分の主人には馴れ馴れしく接する。いったい貴女はどういうつもりで・・・」
「アリス。もうそのへんにしておいてあげてくれないか。そもそも、ソフィアはメイドにはあんまり向いていないんだ。いや、できないことはないんだけど。まあ、ほら、、見ての通り彼女は今日はスカートの丈も合っていないし。」
「だとしても、ここまで何もできないなんて、どうかしています。」
 アリスはプリプリと怒っている。至極まともなことで怒っているのだが、そのまともな怒りが、逆にオリガには違和感として感じられた。
「とにかく、ジゼル様に進言して、他のメイドと部屋を用意してもらうようにするから、少しだけ待っていてくれないかな。」
「・・・わかりました。オリガがそう言うなら、それでいいです。」
 アリスが引き下がったことで、ソフィアはホッと胸を撫で下ろし、もう一度謝った。
 そしてアリスと少し話をしたいというリュリュを残してソフィアとオリガの二人はジゼルの元へと向かうために部屋を出た。
「・・・ごめんなし、オラのせいでオリガちゃんまでアリスちゃんさ怒られっちな。」
「気にしないで。・・・それよりセロトニアの方言でてるよ。レオに聞かれたらまたどやされるんじゃない?」
「あ・・・ごめん。ありがとうね。でも、本当にオリガちゃんが無事に帰ってきてよかったよ。アミサガンの話はこっちにも入ってきていて、リュリュ様をさらって逃げた兵士が居るっていう話で、しかもそれがオリガちゃんだっていうじゃない。わたしびっくりしちゃって。もうオリガちゃんには会えないんだと思ってた。」
 そう言って涙ぐむソフィアの背中をオリガがポンポンと軽く叩いて笑う。
「ありがとう。私が無事に帰って来られたのはソフィアが心配してくれていたおかげかもしれないね。」
「オリガちゃんってさ・・・。」
「うん?」
「さらっとそういう事言えるの、すごく格好良いよね。あ、そういえばこの間またオリガちゃんを紹介して欲しいって言われたんだけど、会ってもらえるかな?新人のメイドなんだけどすごく素直でいい子なんだよ。」
「・・・・・・うれしくない。」
 がっくりと肩を落としながらため息混じりにオリガがつぶやいた。