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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 1 紅と蒼の姫

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 エド達がアミサガンの本陣に到着すると、アミサガン軍の本陣は片付けがほぼ終わった状態だった。
 背後から挟撃をしようと意気込んでいたアレクシス軍は何が起こったのかわからないまま、本陣のあった所をゆっくりと歩いて進む。
 ちらほらと、アミサガン軍の兵士の姿が見えるが、皆一様に戦意はなく、ほっとしたような顔をしている。
「お、エド。・・・って何だその髪の色。」
「レオ!どうしたの、こんなところで。・・・というか、何でアミサガン軍は撤収しているの?」
「ああ、アリスが敵の大将を打ちとって、全面戦争はなんとか回避したんだ。アミサガンが降伏して、今は武装解除と本陣の撤去作業中だ。」
「そうなんだ・・・じゃあ、みんな無事で?」
 エドの問いかけに、レオは少しうつむいて首を振った。
「いや、グレンの奴が崖から落ちて、瀕死の状態だ。さっき馬車で城に向かったけど・・・あまり良くはないらしい。」
「グレンが?」
「ああ。あいつは崖の上から俺達の進路と退路を確保する役だったんだけど、崖の上にも敵が現れちまって、それでオリガと一緒にキャシーをかばって敵ともみ合いになった時に敵と一緒に落ちたらしい」
「そんな・・・レオ、ちょっとこの子お願い。」
 エドはそう言って乗っていた白馬から飛び降りると、レオに手綱を渡して自分は元来た方向へと走っていった。
 しばらくして、馬群の中から猛烈な勢いで、顔色の悪いジゼルを後ろに乗せたエドの馬が走りだしてきた。
「レオ、その子のことお願いね!」
 エドはそう言いながら文字通り、風のようにレオの横を駆け抜けていった。
 続いて、リュリュを前に乗せたアレクシスの操る馬も街に向かってまっすぐに駆け抜けていく。
「そっか・・・そういえばジゼル・・・。」
 城内の噂はレオも聞いたことがあった。
 だから、隊で一緒になった時にグレンが『絶対に騎士叙勲を受けるんだ』と息巻いていたときに、「ああ、そういうことか」と納得もしていた。
 ジゼルはジゼルで、グレンのことなど何とも思っていないと公言していた。だが、それが彼を守るための嘘であることもまた、公然の秘密だった。
「やりきれねえよな・・・。」
 レオは、そう言って空を仰いだ。そして、一つ頷くと、少し離れた所で作業をしていたソフィアに声をかけた。
「ソフィア!俺達も城に戻るぞ。何かしてやれることがあるかもしれねえ。」
「うん!」
 レオはソフィアを後ろに乗せるとぽんぽんと馬の首を叩いて「もう一働き頼むな。」とささやき、馬は答えるように一ついなないた。
 

「大隊長!」
 集中治療室から出てきた衛生兵隊の大隊長にキャシーが駆け寄る。
「グレンは?グレンはどうですか?」
「今は少し持ち直しているけど・・・明日はむかえられないと思うわ。」
「そんな・・・だって、さっきまで元気だったんですよ!なのに・・・。」
 グレンの容態を聞いて取り乱すキャシーの肩を抱いて落ち着かせると、大隊長は廊下に設置してあった椅子にキャシーを座らせた。
「・・・貴女、実戦は初めてだったわね。」
「はい・・・。」
「一番最初の教練の時、私は仲間の死を割り切りなさいと教えたわよね。」
「・・・・・・。」
「辛いだろうけど、割り切りなさい。この先戦争になればもっともっと沢山の人があなたの前で傷ついて、死んでいくわ。でもね、救えなかった一人にこだわっていたら、次の一人を見殺しにしてしまうかもしれない。辛いけど、それが私たちの仕事なの。それができないなら辞めなさい。そんなことでは、貴女の命だって危ないわ。・・・とにかく、あとは私や他の皆に任せて、今日の所は少し休みなさい。」
「・・・はい。」
「大隊長!患者が心停止です!」
「わかりました。今行きます。キャシー、いいわね。きちんと休んで考えなさい。」
 キャシーは治療室に駆け込んでいく大隊長を見送ると、ふらふらと立ち上がり、出口へ向かって歩き出した。キャシーが出口の扉を開こうとした時、猛烈な勢いでドアが開き、顔面蒼白のジゼルが飛び込んできた。ジゼルはキャシーを見つけると、肩を掴んで尋ねた。
「彼は・・・グレンはどこ?」
「だ・・・第一治療室です。」
「第一・・・」
 ジゼルは投げ捨てるようにキャシーの肩を離すと廊下の奥へ消えていった。
 乱暴に離されたキャシーがふらふらとよろけて倒れそうになるのを、アレクシスが受け止める。
「大丈夫かい?」
「あ・・・はい。ありがとうございます。」
「ところで、グレンという兵士の病室は?」
「だ、第一治療室です。」
「ありがとう。リュリュ、エド。彼は第一治療室だそうだ。いくぞ。」
「解りました、兄様。」
 二人はバタバタとジゼルの後を追って廊下の奥へ消えていった。
「大丈夫?顔色悪いけど。」
 エドは今にも倒れそうな顔色のキャシーに尋ねた。
「うん・・・。」
「グレンの容態、そんなに悪いの?」
「・・・うん。」
「そっか・・・。」
「あのね、エド。・・・わたし駄目かも。こんなの、無理だよ。」
「・・・無理はしないで。元々私やヘクトールが村を出るときに無理やり一緒に来てもらっちゃったんだし。キャシーが無理をすることはないよ。今は自分の事だけ考えていればいいから。私はちょっとグレンに会ってくるから。ちょっとだけここで待ってて。もう少し話をしたいから、一緒に帰ろう。」
「でもグレンはもう・・・。」