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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 1 紅と蒼の姫

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 はっはっはと爽やかに笑うデールに対して舌打ちしながらレオが再びナイフを構える。
「大体あんた、バルタザールがリュリュを何に使うかわかってんのか?」
「・・・ああ。」
「知っていて何でリュリュを拐おうとするんだ!」
 そう言いながら繰り出した一撃は、やはりデールの戦(ハー)斧(ケーン)に受け止められてしまった。
「例えば世界を敵に回そうが」
 一息にレオを押し返しながらデールが続ける。
「主君を裏切ろうが」
 レオを押し返して、戦(ハー)斧(ケーン)を振りぬいたままの姿勢でデールがつぶやく。
「それでも守りたい人が、君には居ないか?」
 明らかに先程までとは気迫の違うデールの様子に、レオは気を引き締め直す。
「どういう意味だ。」
「人には立場と言うものがある。」
 隙ができることなど考えない、ただ戦(ハー)斧(ケーン)を後ろに大きく振りかぶっただけの構えから、デールが戦(ハー)斧(ケーン)をレオに向かって振り下ろす。
 その気迫にぞわりとしたものを感じて、レオは後ろに大きく飛び退いた。
 次の瞬間、ドン、と大きな音を立てて地面がえぐり取られる。
「私が悪いのだ。あの時、最初に来た晩に、アンジェの話をはぐらかすようなことをせずに、やめろと言うべきだった。全て判っていて、それをしなかったばかりに、エリヤスが来てアンジェは身動きが取れなくなってしまった。」
 戦(ハー)斧(ケーン)を地面に突き立てたまま、デールは震えながら俯いている。
「エリヤスに兵達を人質に取られて、今更やめるなどとは言えない。そんな状況に、私が彼女を追い込んだ。だからわたしは、間違っていようが、世界が終わろうが、アンジェが是とする道に進むしか無いのだ。」
「っざけんな!」
 隙だらけのデールの顔面に、レオの渾身のパンチが炸裂する。
 殺意のない攻撃には、自動(オート)防御(ガード)は働かない。
「だったら、てめえが守るべきはアンジェリカだけじゃねえだろ。アンジェリカを本当に救いたいなら、リュリュもアンジェリカも兵士もお前が救えよ!」
 と、デールが何かに気づいたように突然顔を上げ、いきなり走りだした。
「あ、ちょっとまて、逃げるなおい。ここで逃げられたら、俺がものすごい恥ずかしいだろうが!
待てって!おい!」
 だがデールはレオの制止など聞かずにまっすぐにどこかへ走っていく。
「なんなんだよいあいつ・・・。」
 レオはもう既に彼の相手をすることに関して、半ば面倒臭くなりかけていたが、作戦の都合上、放っておくわけにも行かずレオはデールを追って走りだした。
 

 アンジェリカはソフィアの攻撃に対して防戦一方だった。さらに、相当な猛攻をかけていたソフィアよりも、アンジェリカのほうが息があがっている。ハルバートの振り下ろされる向きを少し捌くだけでも疲労が蓄積していく。それだけの威力がソフィアの攻撃にはある。
「はぁ、はぁっ・・・何だ、君のその化物みたいなでたらめな攻撃力は。反撃する間がないではないか。」
「ば、化物とか!女の子にいう言葉じゃないよ!・・・じゃなくて、降参してください。貴女の話はメイから聞いています。こちらには、貴女を受け入れる準備があります。リュリュちゃん・・・じゃなかったリュリュ様も貴女を待っているはずです。」
 攻撃の手を止めて、ソフィアがアンジェリカにそう勧告する。
「・・・ありがたい申し出だが、一度主人であるリュリュ様に弓を引いた私にはその資格はないよ。」
 そう言って寂しそうに笑うと、アンジェリカは剣を捨てて地面に座り込んだ。
「殺せ。私は君には勝てない。そして、アンドラーシュに降るつもりもない。」
「え・・・でも・・・ええ・・・どうしよう。」
「殺さなければ、終わらないだろう。」
「だ、だから、降参してくれれば、別に・・・。」
「降参しないと言っている。」
「で、でも剣を捨てたし・・・。」
「もう抵抗するつもりはない。だが、今更降参してリュリュ様に合わせる顔など・・・ない。」
「・・・わたし、少し前に、リュリュちゃ・・様と一緒に旅をしたんです。グランパレスまで。その旅の間に何度も何度も貴女の話を聞きました。リュリュ様はすごく楽しそうに目を輝かせて貴女の話をしていました。お兄さんもお父さんも側にいない中で、貴女だけが唯一家族のようだったって。本当のお姉ちゃんのようだったって。」
「・・・・・・。」
「良いことも、ちょっと悪いこともアンジェに教わったって、今の自分があるのはアンジェのおかげだって。そう言っていました。」
「だが、わたしは!リュリュ様を・・・リュリュを守るどころか・・・。全部知っていて、それでも父上に渡そうとしたんだ。私だって、リュリュ様のことを・・・リュリュの事を・・・。」
 そう言ってうつむくアンジェリカの瞳から涙がこぼれ落ちて地面を濡らした。
「でも、渡さなかったんですよね。オリガちゃんが言っていましたよ。あの時、アンジェリカ様が本気だったら、自分はリュリュ様を助けることができなかったって。」
「オリガが・・・?」
「失敗しちゃった事はもうどうしようもないです。それに、騎士さんには色々あるっていうのもわかっています。でも、それで恥ずかしいからって死んじゃうのは、それこそ一番の裏切りなんじゃないですか?私は大好きな人達のためなら、どんなに恥ずかしくたって苦しくたって頑張ります。アンジェリカさんも、頑張りましょうよ。」
 そう言って手を差し出すソフィアを見て、アンジェリカが笑い出した。
「君は、変な奴だな。メイといい、君といいアンドラーシュのところには変な奴しかいないのか?」
「変だなんてひどいなぁ。わたしたちは良い人なんだよ。」
「そうかもな。・・・私はアンジェリカ・フィオリッロ。アンジェと呼んでくれ。」
「わたしは、ソフィーティア・ハルハーケン。ソフィアでいいよ。アンジェちゃん。」
 アンジェリカはソフィアの手を握って自分の名を名乗り、ソフィアもアンジェリカの手を引いて立ち上がらせながら名乗った。
 と、二人の周りを三人の男が取り囲んだ。
「おいおい、本陣が騒がしいと思って戻ってきてみれば、裏切り者がでちまってるぜ。」
「なあ、エリヤスの奴がやられちまったみたいだけど、こいつら好きにしていいんかな。」
「いいんじゃねえのか?つーか、あいつ俺ら五人ん中で一番弱いくせに家柄のせいで偉そうにしててむかついてたんだよ。あと、この女。こいつも俺達を汚いものを見るような目で見てやがった。俺は覚えてる。」
 そう言って男がアンジェリカを指さした。
「だからこいつは俺にヤらしてくれよ。」
「ああん?おまえ、こんな男みたいなのが好みなのか?おれはどっちかってーと、あっちの胸のでっかい金髪のねーちゃんの方が・・・」
「さっきから聞いてれば、人のフィアンセに向かって、随分と失礼な物言いだな。」
「ああっ?」
 アンジェリカを指さしていた男は後ろから掛けられた声に振り返ると同時に、顔を殴られ、5メートル程飛ばされた。
「デール!」
「アンジェ。すまなかった。先ほどあちらの彼に言われて気がついたよ。私が、君を引き戻すべきだった。私は、君を守ると言うことを履き違えていた。」
「てめえ、何しやが・・・うげっ」