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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 1 紅と蒼の姫

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「・・・と、そんな関係なんですよ。私とアンは。思えばあの頃のアンはもう少しまともでした。ねえ、アン。」
「うふふ・・・そうね、大体そんな感じね。うふふふ・・・あなたもあの頃はすごく可愛かったのにねえ・・・」
 あまり仲良くなさそうにアリスと笑いあいながらアンがそう言った。
「・・・仲がいいのかどうかがよくわからんのだが、旧知の仲ではあるんだな?」
「ええ。それも。彼女はいまやアレクシス軍の一軍の将よ。大したものだわ、ほんと。」
「あら、アンがわたしを褒めるなんて珍しい。」
「皮肉に決まっているでしょ。・・・まあいいわ。ジゼルがでかけているし、アリスにはジゼル配下の兵士を預けるわ。二週間でもう少しまともに・・・と言っても使い物になるかどうかはわからないけど。」
「ちなみに、わたしの預かる部隊はどういう部隊なのでしょう。」
「街の守備隊よ。人数は100人ちょっと。まあ、万が一内門を抜かれた時の最後の砦ってことにはなっているけど・・・ちょっとね。」
 言葉を濁らせたアンの意図を察して、アリスがアンに提案する。
「わかったわ。じゃあその部隊は、開戦までの二週間、わたしの好きなように練兵させてもらうわね。あと、数人使って別働隊を作りたいのだけど。こっちは全部の隊に募集をかけさせて。条件は熱意があって、実力がある人。」
「そう言うと思ったわ。好きに練兵するのはいいけど壊さないでよ。ジゼルに怒られるから。」
「あらあら、そんな人を鬼か何かみたいに言わないで欲しいですね。・・・まあ、わたしの好きなようにやらせてもらえれば、二週間後には、万が一にも内門を抜かれるなんて事のないようにしますよ。」
 そう言って笑うアリスの目が全く笑っていないのを見て、ヘクトールは薄ら寒いものを感じた。



「そういうわけで、公務で街を離れられたジゼル様に変わり、我々の指揮をとってくださるシュバルツ将軍だ。」
 ジゼル配下の兵士たちが集められた城の裏庭で、守備隊の隊長がアリスを紹介する。
 アリスの姿を見た兵士たちは小声でヒソヒソと話をしていて、唯一オリガだけが話をしていないものの、どうしてこういう状況になっているのか理解できずに、目を白黒させていた。
「只今ご紹介にあずかりました、アレクシス皇太子殿下旗下、アリス・シュバルツです。さて、皆さんに最初に言っておかなければならないことがあります。このイデアの街は、あと二週間ほどで隣領のアミサガンの軍と戦闘状態に突入します。」
 アリスが口にした、まだ公式には兵士たちに通達の出ていない衝撃的な事実に、兵士同士で話しをする声が少し大きくなる。
「ただし、ヘクトール殿の傭兵隊、ヴィクトル殿の騎馬隊が居ますからそうそうこの城内に入られるようなことはないでしょう。つまり、勝ち戦である限り、この隊は戦うことはありません。」
 兵士たちの間から安堵のため息が漏れるのを見て、アリスは兵士たちとは違ったため息をついた。
「なるほど。アンドラーシュ侯爵の言うとおりですね。・・・オリガ。」
「は・・・はい!」
 突然名前を呼ばれたオリガは緊張気味に返事をして姿勢を正した。
「あなたの実力はわかっていますので結構。こちらに来ておいてください。さて、残りの皆さん。皆さんの中で志の高い方には明日、少し殴り合いをして実力を見させてもらいます。」
 アリスの言葉に、兵士たちが騒然となる。
「もちろん、それが嫌だというのであれば結構。その場合は、今まで通り街の警備をしてもらいます。少し厳しめの練兵を行うようにはなりますが、いままで通り守備隊長の配下となります。ただ、もしわたしに選抜された場合は、一階級特進。私の直轄とし、敵将を討つ任務に就いてもらいます。もちろん、手柄を上げた場合は、特進とは別に昇進や待遇の改善などがあるでしょう。・・・ですが敵将の首を狙う以上はかなり危ない橋を渡ることにもなります。ですから今夜一晩時間を取りますので、各々よく考えて決断をしてください。希望者は明日の八つ、正門前に集合するように。では解散。」
 そう言って一方的に解散を宣言すると、アリスはさっさとその場を後にした。
 オリガは少しだけ考えて、アリスの後を追うことにした。
「将軍。・・・シュバルツ将軍!」
 アリスはオリガの呼びかけに一旦立ち止まって振り返ったものの、がっかりしたような表情を浮かべてすぐにまた歩き出した。
「将軍。お待ちください、将軍。」
 しつこく食い下がるオリガに観念したのか、アリスが立ち止まって不機嫌そうな顔で振り返る。
「オリガ。」
「は。」
「将軍将軍と呼ばないで。なんだか距離を感じて寂しくなっちゃうから。今はたままたお互い上司と部下にはなったけど、二人のときは今まで通り、アリスって呼んでくれていいのよ。アンの気まぐれな命令のせいで、私達の友情が崩れちゃうのって、寂しいでしょ。」
 アリスがそう言って笑うと、オリガは少しあたりを見回して人が居ないことを確認してから口を開いた。
「・・・アリス。一体どういうことなのか教えてもらえるかい?いきなり将軍だとか言われても正直私にはどういうことか見当もつかなくてさ。・・・私だって、本当は君の事を将軍なんて他人行儀な呼び方をしたくはないんだ。」
 ヒソヒソと耳打ちをするオリガの声を聞いて、アリスの機嫌はみるみる良くなっていった。
「もちろん、ちゃんとお話するわ。今の状況も、これからのプランもね。あなたには頼みたいこともあるし・・・そうね、せっかく部屋を頂いたんだし、とりあえず執務室に行きましょうか。そこでこれまでの経緯を説明するから。」