雪解け
「まどかぁ!」
叫ぶなり駆け寄ってきたその生徒は、高原に抱きつき、涙目になりながらその髪を撫で、よかった、よかった、と繰り返していた。高原も高原で、うんうんと頷きながら、大丈夫、大丈夫だよと繰り返している。恥ずかしそうに笑う高原の横顔から察するに、この生徒との関係は良好だったのだろう。
「なんかあったらすぐメールしなよ、上来んのやだったら、わたしがそっち行くからさ」
「うん、ありがと。ホント大丈夫だから。ごめんね、いっぱい」
「なんもゴメンじゃないよ。まどかにもっかい会えただけで嬉しい」
「大袈裟だなー」
「大袈裟じゃない!」
そう言って、彼女はまたぎゅうっと高原を抱きしめた。俺は完全に空気だったが、そのことが俺を少し安堵させる。高原にはちゃんと、こうして心配してくれる人がいたのだと―興味本位ではなく、本心から高原のことを気にかけてくれる人がいたのだということが、目の前で分かったからだ。結局彼女は、俺のことには目もくれず、高原とだけ言葉を交わして去っていった。
「ごめんね、お待たせ」
「いや、全然」
「めちゃ久々に会ったんだ。いっぱい心配かけちゃったな」
そう言って高原は、ふふ、と笑った。
帰り道は、他愛のない話に終始した。高原は「わたしのが1年長く通ってるからね」などといって、俺の知らない学校の噂などを話し出したりもしたが、それも特に含みがある内容ではなかった。頭の回転の速い高原の話は聞いていて小気味良く、そうだ、こいつはこんなやつだったなとぼんやり考える。お互い紆余曲折を経て再び同級生になってしまったのだが、早くもそんなことは、どうでもいいことであるかのように感じられつつあった。