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雪解け

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「おー、うん。あ、ちと正門あたりで待ってて。俺、保健室行かんきゃなんねーの」

泳ぎそうになる目を誤魔化しつつ、なるべくさりげなく返事をする。高原は俺のひそやかな努力などまったく意に介さない様子で、

「あ、そうなの。じゃあ一緒に行くよ。廊下で待ってる」

そう言ってからパタパタと教室を出て行き、ほどなくコートとマフラーを抱えて戻ってきた。ただの友だちなら、とりたててどうということはないやり取りだったろう。だが、俺と高原の場合は事情が違う。どこかソワソワとしたクラスメイトの視線を感じながら、俺は足早に高原と教室を後にした。

保健室は実習棟の1階で、下足箱は教室棟の1階だ。俺はその往復の道のりで、なるべく3年とすれ違わないことを祈っていた。「俺の学年の生徒」ですらあの様子だったのだから、それが「高原の元クラスメイト」だったらと思うと、気が気ではない。だが俺たちは、保健室での用を済ませて渡り廊下に差し掛かったところで、あっさりと先輩女子に遭遇してしまった。

作品名:雪解け 作家名:ゆき