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ACT ARME4 あたしの力

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他の者たちは立ち上がることがやっとという有り様である。レックは、さきほど3人を庇ったことにより、ダイレクトにダメージを受けてしまった。倒れたまま、動かない。グロウも、ベストコンディションで苦戦を強いられていたのに、満身創痍の状態でグロームを倒せるはずもない。
ツェリライも、メガネがひび割れている。
そしてアコは、頭から血を流し、ぼんやりと気絶している親友を眺めていた。足も、通常なら考えられない方向に曲がっている。アコ自身も、腕を動かすたびに激痛が走った。視界も赤い。




ぼんやりとした視界と思考の中、アコは朦朧とデジャヴを感じていた。
あの時も、自分が、自分の力が人を殺したんだった。動かない両親、自分の力を欲し、何一つためらわずこちらに歩み寄ってくる影。


怖い。恐い。こわいよ。
こんなに怖い思いをしたくないからあたしは力を使うことをやめた。やめたはずだった。
なのに、今。
あたしが新しく始めた生活の中で見つけた仲間が、親友が、自分の力のせいでボロボロに壊されていく。そんなの嫌なのに。もう、あんな思いなんて絶対に味わいたくないのに。
じゃあ、あたしはどうすればよかったの?
この力は生まれたときから身についていて、あたしじゃどうすることもできない。それがみんなを苦しめるなら、あたしは・・・
「死んだほうがいいの?」
誰とも関わりを持たず、誰にも知られず、あの時にひっそりとこの世からいなくなっていたら・・・・もしそうしていれば・・・・。



「     ダメ だよ。ただ人と違うから、たったそれだけで、死ぬなんて・・・・そんなこと・・・」
掠れるような声が聞こえる。
「アコの 両親 を殺したのは、間違っ てもアコなんか じゃない。今、  皆を傷 付けて いる  のも、アコの せいじゃ ない。」
レックだ。レックが倒れて動けない状態のまま、それでもなおアコに呼び掛けている。
「あい つらは 強盗なんだ。アコが  持って いる物を 欲しがって、そのため には 周りが どうなろう と構わない っていう、そんな 身勝手な 奴ら なんだよ。」
「レック・・・。」
苦しそうに呼吸する中、なおもレックは続ける。
「自分が  持って  いる  ものを、 そんな 風 に 否定しな いで。アコの 力は、きっ と  人を  傷つけ  たり しない  から。」
そこまでいった後、レックは静かになった。
「レック?レック!!?」
すぐさまツェリライが脈を確かめた。
「大丈夫です。気絶しただけでしょう。」
「そう・・・。」
アコは俯く。そして考える。
レックの言うとおり、あいつらはあたしの力を奪おうとして襲ってきている。それなのにあたしが悪いなんて言うのは間違いだ。確かにそうだ。
アコの中から、茫然とした闇が少し晴れる。
倒れているフィーナを見る。思い出した。フィーナもまた、ルインと同じようにアコの力を、過去をすんなりと受け入れ、受け止め、そして支えてくれたではないか。アコの力は、人を傷つけ、殺すためにあるわけじゃないと、そう教えてくれたのだ。
あたしは、そんな言葉に救われて、本当なら一人ふさぎ込むところを、またこうやって人に囲まれて楽しく過ごすことができていた。
それを、こんなふざけたやつらになんか奪われたくない。奪われて、たまるものか・・・!



   ッバアァァン!!!!
激しい爆音が轟き、ルインを呑み込んでいた蔦が爆裂した。地面に着地したルインに、アコは質問した。
「ねぇ。本当にあたしの力は、人を殺すためのものじゃないのよね?そう、信じてもいいのよね?」
束縛からようやく解放されたルインは、膝をつきながらもいつもと変わらない調子で答えた。
「イタタ・・・。まあ、力はしょせん力だからね。それで人を生かすも殺すも、持ち主しだいだよ。包丁だって、料理に使えば便利だけど、人に向ければ簡単に人を殺せる。アコちゃんが人を殺したくないというのなら、人を殺さないようにすればいい。現に今だって、僕はアコちゃんの力に助けられたしね。」
その言葉が最後の一押しをしてくれた。
あたしの力はあたしのもの。他の誰のものでもないからあたしのものなんだ。
そして、それをどう使うかはあたし次第。
それなら・・・
「決めた。
       あたしは、あたしの力は
         あたしのためだけに使う!」
息を深く吸い込み、吐き出すように決意を放った。その決意を聞いたルインは。
「え・・・・・あ、うん。そう。」
「え?なによ?その微妙なリアクションは?ダメ?」
てっきり大丈夫だと自信満々に背中を押してくるものだとばっかり思っていたのだが。
「いや、アコちゃんが自分でちゃんと考えて決めたことだから、全くもってもーまんたいだよ。でもさ、その言葉・・・・
なんか後々闇堕ちしそうじゃない?大丈夫?」
「! しないわよ!!失礼ね!」
不謹慎なことを言われ、アコは憤慨する。
「まあ、アコさんは非常に単純、もとい真っ直ぐですからね。きっと誰かにたぶらかされることはないでしょう。」
「そうよ。わかった?」
「はいはい。まあ、もしなんか危険なことになったら、その時は僕らがどうにかするから、アコちゃんは気にせずにその決意を固めるといいよ。」
「うん、ありがと。じゃあまずは・・・・」
と、後ろを振り向いたアコは、フィーナの傍らに屈みこみ、そっと手をかざした。
「お、ヒーリング。アコちゃん、それだけはよく使ってたよね。」
「うん、これはね。」
アコが手を戻すと、先ほどよりも呼吸が落ち着いたようだ。表情が安らかになっている。
それを見て安心したアコは、レックにもヒーリングをかけ、それを終わらせると、ゆっくりと立ち上がった。
「これでよしと。あとは・・・・」
と、グロームと向き直る。近くではグロウがハンマーを地面に着き、辛うじて立っている。
「あんただけね。」
「ほう、やはり我が目をかけただけはある。なかなかの孔だ。」
すでに勝ったも同然というグロームが、余裕の笑みでこちらを見据えている。アコはそれをにらみ返した。
「黙りなさいよ、このウスラトンカチ。勝手に王様ごっこ始めた幼稚なブ男が、偉そうなこと言ってるんじゃないわよ。」
アコのブ男発言に、またもや眉をひそめるグロームだったが、それでもなお表情を崩さず、こんなことを言ってきた。
「ふん。貴様がもし我の元へ来るというのなら、今までの失言やその仲間を許すことは容易だぞ?貴様の力はそれだけに値するものだからな。」
「だから偉そうなこと言ってんじゃないわよブ男。好き勝手許すとか許さないとか言ってるけど、あんたにそんなこと言う資格なんてない。あたしが!あんたを許さない!自分の王様ごっこに他人を巻き込んで、あたしの仲間を、大切な友達をいいように傷つけたあんたを、あたしは絶対に許さない!!覚悟しなさい!」
「覚悟?何の覚悟をすればいいのだ?」
と、グロームが余裕をぶっかましていたその時、足元から気配を感じた。
「!?」
咄嗟に飛び退くグローム。そこからつるが伸びてきた。
グロームのものよりはるかに細いが、それだけに移動速度も速い。
「これは・・・!」
ツェリライが驚く。
グロームも回避しながら感心していた。
作品名:ACT ARME4 あたしの力 作家名:平内 丈