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ACT ARME4 あたしの力

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「そうやって自分の物差しで万物を測って、自分が救わなきゃーって溺れる独善偽善酔狂者って本当にメンドくさいよね。ありがたくもないありがた迷惑押し付けられて、いったい誰が喜ぶんだよ?少し頭冷やして視野広げる練習したほうがいいよ、ほんと。」
「・・・・・・・・・」
「そのくせ、その自分のご大層な正義を少しでも貶されると、逆上して暴れるから始末に負えない。結局のところは自分が正しくないといけない困ったちゃんだということに自覚すらない。キブをどうこうしようと言う前に、まず自分をどうにかしないということなんか頭の片隅にもない。まさに独りよがりな正義漢。それで誰が得するとか知ったこっちゃない。ただ自分の目的果たして満足すればそれで終わりってね。」
既にルインの独壇場と化しているが、まだルインの口は止まろうとしない。
「大体、洗脳装置(そんなもの)使わないと部下も従えないほどの器の小ささなのに、平和ボケしてるとは言え一つの町を落とそうとするというのにも笑っちゃうよね。データはあくまで情報で、それで人を動かすことはできないってことすら知らないんじゃないの?」
「・・・・・・〜〜〜ッ!」
「一度、人徳というものを勉強し直したらどうかな?」


ここまであからさまに卑下されて、逆上しないものはいない。相手がグロームのような自分至上主義者なら、なおさらだ。
「貴様は一度、死の制裁を与えるべきだな・・・・!」
「ほーら怒った。ほんとわかりやすいよ。     !!」
ルインが言葉を続ける前に、気配が変わった。咄嗟にルインたちが飛び退いた瞬間、そこから極太の蔦が生えてきた。
「っと!危ない危ない。なかなか鋭い不意打ちじゃん。危うく捕まりそうだったよ。」
言う割には余裕が垣間見えるルインに、グロームも対抗して不敵な笑みを見せる。
「虚勢を振りまいている場合か?こちらには強硬手段もとるという選択もあるのだぞ?」
「強硬手段?なんのこと?」
ルインが訳がわからないとばかりに聞き返すので、グロームがこいつバカだとばかりに鼻で笑い、手を挙げた。
「やれ。」





しかし、何も起こらなかった。
驚いたグロームが後ろを振り返る。そこには洗脳装置に拘束されていたはずのアコがいない。さらに視線を右に向けると、見せかけでは開放していたが、いざとなれば捨て駒として利用しようと考えていたフィーナの姿もない。
「何だと?」
「あなたの探し人なら、ここにいますよ。」
上から聞こえたその声につられ見上げると、部屋の壁沿いについている、二階に当たる通路に、アコとフィーナ、そしてツェリライとレックの姿があった。
「あなたがルインさんとのダベリングに夢中になっている際に、せっかくなので救出させてもらいました。貴方のそばにいる衛兵さんたちも、全くの無関心でしたしね。」
と、いかにも余裕しゃくしゃくでしたとばかりにこちらを見下ろすツェリライに、グロームが歯ぎしりする。
「ねぇねぇ、も一回聞いていい?強硬手段って何のこと(笑)?」
そこにルインが追い打ちをかける。
「貴様ら・・・!!!!!」
散々バカにし続け、さすがに満足なのか、ルインの目が本気に変わった。
「さぁて、そろそろ前座も頃合いに、始めようかね。」
「貴様ら全員地獄の責苦へと堕としてくれよう・・・!」


戦いは、なんとグロームのほうが優勢だった。周りの洗脳された兵士たちはいともたやすく倒せたのだが、親玉であるグロームが手ごわい。
グロームは木のアトリビューターだったからだ。
最初にやったように、地面から蔦を生やし拘束。腕に仕込んだ専用のカートリッジから蔦を生やし、まるで腕を蔦そのものに変えたかのように操り、圧殺・撲殺を図る。本人直接の攻撃に加え、下からの不意打ちにも同時に対応しなければならない戦いに苦戦を強いられる。
また、蔦があまりにも太く強靭なため、ルインでも斬るのは簡単ではない。得物が打撃系のハンマーであるグロウは弾くので手いっぱいだ。唯一、炎を操れるレックがなんとか近づこうとするが、グロームは驚くべき反応の良さで対応してくる。
一対三という、通常なら絶対不利の状況で、グロームは完璧に応戦していた。
「やれやれ、見た目よりやるね。」
「我を愚弄したこと、少しは後悔できたか?」
「だーかーら、人間はそんなに単純じゃないっての。苦戦程度いくらも経験してるから。」
減らず口をたたけるところをみると、まだ余裕はあるようだ。だが、このままだとジリ貧になる可能性が高い。早いとこ打開策を見つける必要があった。

ガッ!と激しい音がなり、ルインが壁際に飛ばされる。だが受け身をとり、壁に着地したルインは、勢いそのまま壁をけり、グロームに突っ込んでいく。
「はぁぁぁぁぁああああ!  突閃!!」
「植蔦生成(ジェネレーションプラント)!!」
ルインの放つ一撃。それをグロームは腕から複数の蔦を束ねたものを放出し、受け止めた。ルインはそのまま勢いと力で押し切ろうとする。だが、力は向こうのほうが上だった。
急激に伸びた蔦。その中にルインは飲み込まれた。
「ルイン!」
「ちっ、あのバカ!」
グロームがルインを救出するために動く。だが、その瞬間、一瞬おろそかになった注意の隙間に、下から蔦が伸びてきた。
「ッ!!!」
グロームが振り払うより早く、蔦がグロームの体を縛った。そのままグロームの体を、そして首を絞める。
「グ・・・・ガ・・・・・ッッ!」
「まずいですね。このままでは。    !!!」
ツェリライが何か策を講じようとしたその時、グロウを縛った蔦が、こちらに向かって振り下ろされてきた。
「みんな!!」
レックが跳躍し、上にいる面々を庇う。だが、相手の力のほうがはるかに上だった。
激しい衝突とともに、煙とがれきが舞い上がる。二階の通路は崩壊し、そこに居た者は全員成す術もなく落下する。


パラパラと降ってくる瓦礫の下に、レック、グロウ、アコ、ツェリライ、フィーナが倒れていた。ルインは未だ蔦の中に飲み込まれたままだ。
「いかに貴様らが愚かか、これで理解できただろう。だが、我をここまで侮辱した以上、ただでは終わらせん。覚悟するといい。」
メキメキと、ルインを呑み込んでいる蔦が嫌な音を立てる。
「特に貴様は、最上の苦痛を持って葬ってやろう。」
「待ちやがれドチクショウが。」
グロウが立ちあがり、睨みを利かせる。
「ほう、あれだけの攻撃を受けておいて、なお立ちあがれるか。少し見くびっていたようだな。」
「黙れってんだよ。うるせえ。」
「だが、勇ましく立ち上がったのはいいが、その状態でいかに我に立ち向かうつもりだ?」
「だから、黙れ。この程度で俺をつぶせるなんざ、思い違いも甚だしいんだよ。」
体中傷だらけで、いたるところから血が滴り落ちているが、グロウはなお闘志を衰えさせない。まるで眼光だけで相手を焼きつくそうとしているかのようだ。
「ふん、面白い。ならばどこまで足掻けるか、見届けさせてもらおうか。」
そして再びグロウはグロームに立ち向かっていった。
作品名:ACT ARME4 あたしの力 作家名:平内 丈