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ACT ARME4 あたしの力

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「・・・それってつまり、キブを乗っ取ってやろうってこと?」
「そうだ。」
「あんた、バカじゃない?そんな事できるわけないじゃない。」
「大人しくしていれば傷つけることはしない。そういったはずだ。」
後ろで撃鉄を鳴らす音と、小さな悲鳴が聞こえる。
「・・・・それで、あたしを利用するって言ったけど、何をするつもりなのよ?」
歯ぎしりしながらアコが問う。それに対して、グロームは単純明快な答えをよこした。
「難しい話ではない。お前が我が組織に入る。それだけでいい。さすれば、後ろの娘は解放しよう。」
その言葉にアコは後ろを振り返る。そこに怯えて目から涙が溢れているフィーナがいた。
その眼を真っすぐ見つめあう。そして互いの気持ちを確かめあい、結論を出した。
「悪いけどあたし、自分の力はめったに使わないって決めてるの。あんたみたいに胡散臭い奴にならさらによ。」
この返答にグロームは、今度は眉一つ動かさずに指示を出した。
「つまりはNOということか。     ならばよろしい。やれ。」



ドンッ!


ルイン、レック、ツェリライ、そして合流したグロウは、バスを乗り継ぎ、その後は全速力で走ってアコたちが捕えられている場所へと向かう。
「ったく、あいつらしくねぇ。むざむざ敵に捕まるたぁな。」
「仕方ないよ。多分さきにフィーナちゃんが人質にとられたんだろうし、アコちゃんは自分の力で敵を倒すことをよしとしてないからね。」
過去の悲劇を招いたのは自分の力。にその思いがトラウマとなって胸に刻みつけられているアコは、たとえ相手が敵であったとしても、力を使うことを躊躇うだろう。
今度はふらふらしている不良集団を吹っ飛ばすのとはわけが違う。全力で相手を倒しに行かなければこちらがやられる、戦闘なのだ。
「急がないと!アコがもし力を無理やり使わされることになんてなったりしたら・・・。」
その先は考えたくない。そしてそれを現実にさせるわけにはいかない。何としてでも。
ことさらレックは、強くそう思っていた。
「間に合ってくれ・・・!」


「フィーナ!!!」
「ガッ・・・あ゛ぁっ・・・・!」
フィーナがその場で崩れ落ちる。グロームは冷ややかな目でそれを見下ろしている。
「たかが銃身で腹を突いただけだ。喚くほどのことではない。」
「あんたねぇ!」
怒るアコを歯牙にもかけず、グロームは再び聞いてきた。
「もう一度だけ聞こう。我が組織に入れ。次は引き金を引く。」
「・・・・・・・ッ!」
追いつめられる。こうなったら背に腹は代えられない。一旦大人しく従うほかない。
「・・・・わかったわ。あんたの言うこと聞いてればいいんでしょ。そうしてあげるわよ。」
「よろしい。ならばついてこい。」
「ちょっと待ってよ。」
「心配せずとも、その娘はすでに解放している。」
確かに、フィーナの傍にはもう誰もいない。
「アコ・・・ちゃん・・・。」
倒れた状態のまま、それでも親友を案じてくれるその眼に、アコは明るく笑いかける。
「大丈夫だって。フィーナは先に帰ってて。あたしも後で帰るからさ。」
そしてアコは、部屋の奥まで連れて行かれる。そこに、奇妙な機械があった。
「座れ」
そう命令されると同時に、強引に椅子に座らされた。そのまま椅子に拘束される。そして頭に奇妙な機械とつながっているヘルメットの様なものを被せられた。
機械には疎いアコでも、これがなんなのかは想像できた。
これは、洗脳装置・・・?
ちょ、ちょっと待ってよ!こんなの聞いてないって!!
抵抗しようとするがもう遅い。ブ男の指示で、装置のスイッチに手がかかった。
「アコちゃん!」
フィーナの悲鳴が高く上がった。


ドガンッ!!!と一際でかい爆音が鳴り響き、閉ざされていた扉、の横の壁に大穴があいた。
「なんで扉じゃなくてわざわざ壁を壊すのさ?」
「わかってないなあレックは。普通救世主は壁を壊して登場するものなんだよ。」
「んなセオリー無えけどな。てか、やるなら自分でやれよ。」
命令されて壁破壊をやらされたグロウのぼやきに、貸す耳など持っているはずもないルインがかっこよく(と自分ではそう思っているという意味で)キメる。
「待たせたな!」
「待ったわよ!!あと何秒か遅かったらアウトだったじゃない!!!」
本当は待望の眼差しで名前を呼ばれることを期待していたルインだが、そうならないことは予測済みだったので気にしない。
「何者だ?貴様等は。」
自分の計画に水を差され、不機嫌そうにグロームが聞く。
「普通、名乗る時はまず自分からというのがマナーだと思うんだけどね。グロームさん?」
「何故我の名を知っている?」
と、視界の下隅に何かが走っていくのが見えた。ツェリライがそれを拾い、懐にしまった。そしてグロームににやりと笑いかけた。
「まあ、そういうことです。」
「ほう、なかなかの発明品だな。この場にいる誰にも一切感づかれることなく、追跡を行えるとは。」
グロームが感心したのに気を良くし、ツェリライがそのまま説明を長々を始めようとするのを感知したルインが強制的に止める。
「それで?今のから大体の話は聞いてたけど、動機を聞かせてもらってもいいかな?」
「腐敗し、堕落しきったこの町の再興。私が望むべくは、ただその一つだ。」


しばしの沈黙。取り敢えずルインが口火を切る。
「えーっと?それはつまり、キブを俺が乗っ取って、よりいい町にしてやろうということでいいのかな?」
「そうだ。」
「うん、まあ動機はわかったけどさ。別にどうこうしなきゃならないような町だっけ?キブって。」
このルインの言葉に、グロームは嘲笑した。
「今のが何よりの証拠だ。この町の住人は、今の状況さえまともな把握ができておらず、日々安穏と惰眠を貪り続けている。このまま行けば町の衰退は目に見えている。ならばこの私がこの町を変え、衰退を進化へと変えて見せようというのだ。」
確かに、この男の言うことにも一理ある。キブは、イーセに存在する5つの国の一つ、ラトリアの中に存在する町なのだが、そのラトリアの中で一番といっていいほど発達しているものがない。農業も工業も商業も、どれをとっても中の下。唯一あげるとするなら、キブは良い資源が地中に眠っているので、鉱業が発達していると言えばしているが、その他の町と比べるとやはり秀でているとは言い難い。
だからその鉱業を発展させて町を進化させることはできる。町の今後を考えればそれが良策である。
だが・・・
「どう見ても自己陶酔の狂信バカの犯行です。大変良くわかりました。」
ルインの反撃に、グロームは眉をしかめる。だがルインの快進撃はここから始まるのだ。
「自己陶酔の狂信バカだと?」
「そう。まさしく( ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ?ってやつだよ。なんか偉そうにこの町の行く末語ってくれちゃってたけど、誰か一人でもキブを生まれ変わらせてくれーって頼んできたの?」
「そんな要求は必要ない。現状を見れば明らかな・・・」
グロームが皆まで言う前に、ルインが口を挟む。
作品名:ACT ARME4 あたしの力 作家名:平内 丈