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ACT ARME4 あたしの力

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逃げて、逃げて、ただひたすら逃げ続けて、やがて力尽きた。石につまずいて転んだアコは、そのまま動くことをやめた。


その後、倒れているアコを、ルインが居候していたアパートの大家さんが発見、保護した。
目覚めてすぐのアコは混乱していて、うつろに何か呟いていただけであった。
そんなアコに大家さんは何も言わずテーブルに座らせ、ココアを差し出した。
その温かさにホッとしたからか、アコは残らず飲み干すと同時に泣きだした。
あまりにも突然泣き出したため、驚いたルインが傍によると、ルインに縋りついて泣いた。泣きながら叫んだ。
「あたし・・・・あたしね・・・・・お母さんとお父さんを・・・・・殺しちゃったの・・・・・あたしが・・・・・・あたしが力を持ってたから・・・・・・・殺されちゃったの!!」
後は言葉にならず、ずっとわあわあと泣き続けた。
泣き疲れ、そのまま眠ってしまったアコを布団に寝かしつけた大家さんは、アコの身元を捜し、先ほどの悲痛な叫びが本当であったことを確かめると、アコを引き取ることを考えた。
しかし翌日、アコは目覚めると洗いざらい今まで何があったかを話し、一人暮らしをすると言い出した。
驚いた大家さんが止めようとしたが、アコは頑として譲らず、家で家事手伝いをしていたから生活は一人でできるといい切り、根負けした大家さんに不動産などと手続きをしてもらい、以後そのまま一人暮らしを続けている。

以前ルインが、なぜアパートに居候をしなかったのかと尋ねると、アコはこう答えたという。
「お父さんとお母さんを殺したのはあの男だけど、あの男がやってきて、それを家に入れたのはあたしなの。だから一人暮らしをしようと思ったし、もう力を使おうとも思わないの。」
その言葉に込められていたのはやはり自責なのだろう。もしかするとアコは、本当は一切人との関わりを断とうと思っていたのかもしれない。だが現状そうなっていないのは、やはり人恋しく、寂しかったからかもしれない。



「これがアコちゃんが力を使わない理由だよ。ぱっと見天真爛漫娘に見えるけど、大変な人生背負ってたりするんだよね。


・・・・・・・・って、おーい?聞こえてる?」
さっきから下を俯き動かないレックに呼び掛ける。その声にハッとしたレックは、ようやく気がついたようだ。あわてて返事する。
「う、うん!聞こえてるよ。」
だがそう言ったきり、また俯いた。
そんなんだから、ルインが気配を消してすぐ傍まで近づいたことに気づかない。
「わ゛ああああああああぁぁっ!!!!!!!」
ルインは、レックの耳元ですさまじい絶叫を上げた。
「わ゛ああああああああぁぁっ!!!!???」
レックは椅子から転げ落ちた。
「な、なな、何すんのさ!!?」
憤慨するレックに、ルインは一切の反省の色なく、むしろ胸を張ってこう答えた。
「そこに隙だらけのレックがいたから!」
マンガだったら間違いなく後ろに「ドンッ!」と効果音の文字が書かれているだろう。それほどまでに堂々とした宣言だった。
そんなルインに、レックはもうどこを突っ込めばいいのか分からず、ただ黙って椅子に座った。
だが、それでも気にかかることがあったので尋ねた。
「今の話、してよかったの?アコがルインに自分の過去を話したのは、やっぱり事件のすぐ後で気が動転してたからで、本当は誰にも話したくないことなのじゃないかな?」
真剣に聞くレックに対して、こちらはさして気にしていないようだ。
「ん〜、どうなんだろうね?でもアコちゃんはだれにも話すなとは言わなかったけど。」
「いや、でも誰にも知られたくなかったかもしれないじゃないか!?」
声を荒げるレックだが、ルインは依然としてそこまで気にしている感じはしない。
「まあ、そうかも知れないけど、そうじゃないかも知れない。僕が自分の過去を知らない事に頓着しないように、アコちゃんも周りが思うほど気にしてないかもしれない。アコちゃんって、吹っ切るの得意だし。」
「でもっ・・・」
レックが皆まで言う前にルインが遮り、必殺の一言を放つ。
「ま、もしアコちゃんが気にしていて、レックに話したことを怒ったとしたら、話した僕と聞いたレックの共犯だね!」
必殺口撃、暴論。
直後レックの腕が激しく唸ったという。


バン!と激しくドアが開けられる。
そこに立っていたのは、ツェリライだった。
「お、ツェルどした?そんなに慌てて。」
いつもの様子とは明らかに違うツェリライを前に、陥没した顔で呑気に尋ねるルインだったが、そんなことは眼中にないとばかりに要件を切り出した。
「ルインさん、レックさん。直ちに出発する準備を整えてください。」
その目が険しい。そこで何やら異常事態が起こっているということを察したふたりも真剣に聞く。
「何があったのさ?」
「アコさんとその友人のフィーナさんが、何者かの手により誘拐されました。」
「・・・はぁ!?」
突然のことに驚く。
「誘拐って、だれに!?」
「わかりません。誘拐した動機も不明です。ただ・・・・」
ツェリライが続けようとした言葉をルインが引き取る。
「予測はできるか。」
「なんで誘拐されたのか、わかるの?」
「まぁ、予測だけどね。一つは、アコちゃんを餌に、僕ら、というか僕か、をおびき寄せるため。そんなことする理由は聞く必要ないよね?」
「あぁ・・・・、うん。」
事務所の設立からこの話になるまでに、ARO(ルイン所長の事務所の略称)にそこそこ依頼が入るようになった。
そしてその依頼遂行率100%という華々しい成績を上げている。
が、その華麗な経歴の下に、累々たる犠牲者の山が連なっているのだ。
あくまで犠牲者であって死人ではない。だがルインのターゲットになった者は軒並みなぎ倒されている。
なし崩しにルインの助手ということになっているレックは、その全てを目にしているので、狙われる理由はよくわかっている。
「そしてもう一つは、アコちゃん自身が狙われた、か。今までのストーリーの流れからして、十中八九後者だろうね。ツェル、アコちゃんの居場所は?」
「今トラッキング(ツェリライの発明品、登録した人物の追跡が行える)に追跡させています。僕たちも向かいましょう。」
「わかった。あとグロウも呼んどこうか。行こう!」
ルインは携帯を取り出し、一行は外へ飛び出した。



「ちょっと乱暴しないでよ!もう少し丁寧に扱いなさい!!」
縛られ、数人の男たちに引っ立てられているアコが吠える。フィーナは怯えて、声が出ないようだ。
二人は、ケーキバイキングの帰り道に突然囲まれ、抵抗する間もなく廃工場のような場所に連れ込まれた。
「可愛げのない女だな。少しはそっちのように大人しくしたらどうだ?」
奥から声が聞こえる。そして姿を現したのは、グロウと同じぐらい恰幅がいいブ男だった。
「大人しくこちらに従えば、無駄に傷つけることはしない。」
「お決まりのセリフ言ってないで、名前ぐらい教えなさいよブ男。」
アコのブ男発言に、眉を動かしながらも名乗る。
「我が名はグローム。我が計画の遂行のために、貴様の力を利用させてもらう。」
「計画って何よ?」
「この町を手中に収める。それだけだ。」
作品名:ACT ARME4 あたしの力 作家名:平内 丈