「舞台裏の仲間たち」 74~75
アイラブ桐生Ⅲ・「舞台裏の仲間たち」(75)
第三幕・第二章「最後の独白」
「女」を完成して一ヶ月後の四月二十日、
中村屋奥の相馬家居間で友人達と談笑中、突然に碌山が吐血をします。
二日後の早暁、相馬夫妻や駆けつけた多くの友人たちが
見守るなかで碌山は絶命します。
三十歳と五ヶ月、天才にありがちな夭折でした。
碌山の葬儀が行われてから何日かのち、主人を失った碌山のアトリエには
一人佇む相馬黒光の姿があります。
黒光は死の床で碌山から秘かに手渡された合鍵で、故人が愛用していた机の
引き出しを開けて、一冊の日記帳を取り出します。
びっしりと歓喜や苦悩の文字が書き込まれたその日記帳の、
一枚一枚を黒光はむしり取ります。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 74~75 作家名:落合順平