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「舞台裏の仲間たち」 74~75

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 その美貌と美しい身体の持ち主ゆえに、多くのロマンスの
噂も残っています。美術学校の講師と親しくなりすぎたために、
学校への出入りが禁止されるなどその逸話ぶりに、
際限のないものがたくさんあります。

 日本画家の竹内栖鳳のモデルもつとめています。
のびのびとした肢体で自由に天界を舞う天女像は、岡田みどりという
モデルの
イメージそのものだったようです。
そのとき竹内が、みどりをモデルにデッサンしたとみられる、素描の
『天女』像が、貴重な作品として大切に保存されています。
1913年(大正2年)には竹内の代表作となる『絵になる最初』のモデルを
つとめ、この作品は、同年の第7回文展に出品されて、
たいへん多くの注目を集めています。


 「随分と苦しいポーズだわね。
 とってもながくはつゞかないのよ。
  最後(おしまい)には破壊(こわす)と、お仰(しゃ)ったんだけど、
 高浦さん(高村光太郎)がいらしてお止めになったの。
 私は裸体になんかなったことがなかったんだけれど・・・・」

 岡田みどり、本人の後述です。


 制作途中で壊そうとした碌山を、親友の高村光太郎が止めています。
限りある命を燃やしながら、すべてを注ぎ込んで製作をしている「女」も、
碌山にしてみれば、思うに任せない製作内容が続いていました。
思うにならないまま、愛する黒光への思慕ばかりが続いている自分の足跡を
苦々しく振り返るような想いも、作品の中に籠っていたのかもしれません。

 3月の半ばになって、もうこれ以上はできないという地点に至りました。
碌山は最初に黒光に見てもらいたいと思い、アトリエへ招きます。
黒光の母子が連れ立ってやって来ました。
彫刻台の上に乗った女性の裸体の粘土像が、目に飛び込んできた瞬間、
子どもたちは一斉に、「カーさんだ!」と叫びます。
黒光は胸がいっぱいになり、言葉もなく伏し目がちにじっとただただ立ち尽くします・・・

「もがくようなその表情」は「女性の悩みを象徴して」いると、
碌山からのメッセージを、黒光は胸を熱くして明確に受け取ります。

 しかし、実際の「女」はそうは見えません。
左足をややずらしてひざまずき、
両手は後ろに結んでわずかに胸を張っています。
上向いた顔のその唇は、わずかに開かれていますが、
目は閉じられたままです。
どこかに悲しみを秘めつつ、陶酔感すら漂わせた顔がそこにあります。
まさに、苦悩を突き抜けて歓喜に至る表情が、そこには
濃厚に漂っています・・・・・