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ISSIYASU  後編

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萩乃の肌は真っ白でそれこそ陶器のように壊れやすそうで――

って俺は何を考えているんだ。

そんな風に俺が混乱していると、ふと素に戻った萩乃が、

【安芸】 「キャーッ!! いきなり覗かんといてよ!」
【安芸】 「たくのアホーッ!!」

と言ってピシャッっとカーテンを閉めてしまった。

※CG、終了

■BG0010:店内

ひどい。
これはあまりにひどい

その場に崩れ落ちた俺は絶望にうちひがれていた。

もう二度と海に行きたいなんて言わないよ絶対。

※画面、フェードアウト

※画面、フェードイン

■BG0008:リビング

※安芸、怒り

【安芸】 「……」

家に帰るまで萩乃は一言も口をきいてくれなかった。

【磐手】 「あ、あのさっ。さっきの水着にあってたと思うよ」
【安芸】 「……」

※安芸、呆れ

【安芸】 「はぁ、まだこの期に及んでも水着の話するんか……」
【磐手】 「あっ。いや、その」

なんで水着の話をするんだ、俺のバカ。

といって自分を責めていると、

【安芸】 「……はぁ」

……あれ?

意外な反応。

【安芸】 「もうこのことはもういいから、海に行く準備しとくんやで」

※安芸、笑顔

【安芸】 「忘れとったら承知しいへんからな」

※画面、暗転

次の日の朝
準備満タンな安芸に起こされた俺は準備もそこそこに電車に連れ込まれた。

※画面、横ワイプ

■BG0012:電車内

到着までまだ何時間かはある。

【安芸】「はよ着かへかなー?」

さっきからそればかりを繰り返していた。

もう待ちきれないらしい。

今日は絶好の海日和で車窓からは澄み渡る青空が見えていた。

【磐手】「そういえば、安芸は泳げるのか?」
【安芸】「ううん」
【磐手】「ええっ」

スポーツが得意そうなのにな……。

【安芸】「大丈夫や」
【安芸】「この中におっきい浮き輪入れてきてあるから」

そう言って指差すはパンパンに膨らんだカバンだった。
他にもいろいろ入っていそうだな……。
この中に買ってあげた水着も入っているのだろうか……?
そんな話をしていると時間はあっという間に過ぎた。
ついに……。

【磐手】「着いたで!」
【安芸】「着いたな」

駅の前は一面海だった。

■BG0009:砂浜

潮の匂いも波の音も風にのってここまで届いていた。

【安芸】 「わぁ~綺麗~!」

薄手の夏服に身を包んだ萩乃が砂浜に向かって走り出していく。

※安芸、退場

【安芸】 「なにしてんの~。先に海入ってるで~」

そう言って服を脱ぎ捨てて萩乃は水着姿になった。
夏の強い日差しを受けて輝く海に萩乃は飛び込んだ。

思い切って海に来て良かったと思う。
萩乃のこんな笑顔を見れるなんて。

俺も海に向かって走りだした。
ジャブンとそのまま海に飛び込んだ。

【安芸】「えいっ」

安芸が水をかけてくる。
その冷たさが今日の暑さと相まって気持ちいい。
安芸の水着姿はとても眩しかった。
見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいスタイルが良かった。

【安芸】「どうしたんや?」
【磐手】「な、何でもないよ」

慌てて打ち消した

見とれてたなんて恥ずかしくて言えない……。

【安芸】「あそこのブイまで競争や」

そう言うと返事も聞かずに安芸は泳ぎ始めた。
仕方なく僕は平泳ぎで泳ぎ始めた。

【安芸】「勝ったでー」
【磐手】「あれ?」

安芸はキレイなクロールでどんどん俺との間を開けるとそのままゴールしてしまった。
まだ俺は三分の二ほどしか泳いでいない。

【安芸】「!? ゴボッ」



ブイの近くに浮いていた安芸が突然、姿勢を崩してもがいた。

【安芸】「おい、安芸」

俺は慌てて安芸に急いだ。

※画面、横ワイプ

【磐手】「おい、安芸! 大丈夫か!?」
【安芸】「ごほっ! だ、大丈夫や」
【磐手】「まったく……」
【磐手】「砂浜に一度戻るぞ」

そう言って俺は安芸に背を向ける。

【安芸】「?」
【磐手】「乗れよ、砂浜まで運んでやるから」
【安芸】「……。ありがとう」

安芸を背負うと沖に向かって泳ぎ始めた。

人を背負って泳ぐのって難しいな……。

少しだけ後ろを見ると、若干赤みの差した安芸の顔があった。

【安芸】「な、なんや……?」
【磐手】「なんでもない」

※画面、横ワイプ

夕焼けに染まる海を後にして俺達は電車に乗り込んだ。

【安芸】「今日は楽しかったなっ」

やっぱり海に来てよかった。
安芸の水着可愛かったな。
何より楽しかった。
またこのような思い出を作りたいな……。

■BG0008:リビング

ちゃぽん。
風呂場からだ。
見ればドアから光が漏れている。

ああ、なんだ。風呂に入っていたのか。

ちょっとした出来心で扉を開いてみた。

※画面、横ワイプ

安物の洗濯かごの中には安芸の服が放り込まれていた。
ちゃぱあ。
安芸が湯船から出るおとがして俺は一瞬心臓が止まった。

やばい。

そう直感した俺は後ずさった。

「うわっ」

;こける
;洗濯カゴに手を突っ込っこんでしまった――。

※画面、揺らす

つまずいた俺は派手な音を立てて洗濯カゴに手を突っ込っこんでコケた。

こ、これって安芸の服――。

「だれやっ」

がらっ。
風呂場のドアを安芸が思いっ切り開け放った。

【磐手・安芸】「――!?」

流れる沈黙。
驚きを浮かべた瞳がこちらを見つめる。

「え、えっと。これは……」

そこで俺は言葉を詰まらせてしまった。
俺は二つのことで驚いた。
一つはこのシチュエーション。
もう一つは――

耳と尻尾……?

……が付いていたからだ。
こちらを見つめる瞳が揺れた。

;安芸、飛び出す。

※画面、暗転

その日、俺は近くを探しまわったが安芸を見つけることは出来なかった。
俺は不安を抱きながら床についた。


作品名:ISSIYASU  後編 作家名:なお