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桃井みりお
桃井みりお
novelistID. 44422
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毎日が記念日だって思うんだぼくのとなりにきみがいるなら

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2013年10月 もう一度ぼくのために笑ってよ嘘でもいいし哀れみでもいい



 うたうことが見つからないとき、お題を決めてうたってみるのもいいと思う。今回は、『嘘』をお題にして10首うたってみました。


 嘘というと、誰かをを騙したり傷つけたりするための、悪いことのように思いがちだけど、実際にはその誰かは、自分であることが多いものだ。でも、誰も騙すわけでなく、傷つけるわけでもない、愛おしい嘘もあったりするものだ。

『「キスをするためにあるのさ、くちびるは」
 「そういう嘘をつくためでしょう?」』
『見せかけの愛が地球を救うならきみの嘘でもぼくを救える』
『「朝焼けが眩しい」なんて嘘ついてにやけた顔をごまかしてみる』

 嘘をつくことが悪いのではなくて、誰かを悲しませたり、不幸にしたりすることが悪いのだと思う。逆に言えば、嘘をつかれても、悲しくなったり、不幸になったりしなければ、騙されることも悪いことではない。
 でも、大切な人の嘘になら、あえて騙されていたいなんて気分もあったりする。大切な人の嘘を、信じるのではなく、騙されてあげている。そんな自分に気がついて悲しくなってしまう。嘘をつくのが上手くなることも、騙されるのが上手くなることも、どちらもとても悲しく、不幸なことだ。

『騙されることが上手になったのが悲しい、嘘をつかれることより』
『恋愛が下手だったというわけじゃなくぼくらは嘘が下手だったんだ』
『「目にゴミが入った」なんてへたな嘘きみにつかせたぼくは重罪』

 しかし、さらに悲しく不幸なのは、大切な人に嘘をつかせなければならないことかもしれない。

 22歳の冬、中学時代の一つ年上の先輩と再会し、恋に落ちた。K先輩は翌年結婚することが決まっていた。K先輩の車であちこち出かけた。夜景の見える駐車場で、K先輩は言った「このまま、二人でどっか行っちゃおうか?」ぼくは、何もいえなかった。K先輩は「このまま結婚しちゃっていいのかな?」と呟いた。ぼくは「ぼくに出来ることはないの?何でもするよ?」と訊いた。「なんでも?」K先輩は少し黙った後「じゃあ、キスして」と言った。ぼくは、黙ってキスをした。いつもは「じゃあね」とか「またね」とか「電話するね」と言っていたのに、その夜は「バイバイ」とK先輩は言った。それきり、K先輩には会っていない。

『嘘よりも悲しいキスがあることを知ってしまった二十二の冬』
『もう一度ぼくのために笑ってよ嘘でもいいし哀れみでもいい』

『あの時の嘘が本当になるのなら声を失ったっていいのに』

『少しでもいい人間になりたくて嘘笑いするだめな動物』
                         
                         2013年10月某日