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CROSS 第20話 『Eris』

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 ガリアたちを乗せたエアリアル2機が着陸した頃、その世界の周辺の異次元空間では、CROSSの特務艦と幻想共和国軍の戦艦『紅緋』が、再編成を終えて接近してきたザフト艦3隻と睨み合っていた。

 CROSS艦の指揮代行である隊員は、緊張した様子で、モニターに移し出されている3隻のザフト艦を見ていた。
「紅緋からの連絡です。『我々の艦の後方に移動せよ』とのこと」
通信担当が艦長代行に告げる。
「……うーん、この場合、移動するしかないだろうな。よその軍の命令に従うのは、気が進まないことだが……」
艦長代行は、いかにも嫌々そうにそう言ったが、彼がびくついていることぐらいは、ブリッジにいる全員がわかっていた……。
 CROSS艦は、紅緋の後方に、まるで逃げるように移動した……。もし山口が見ていたら、激怒しそうな光景であった……。



「大日本帝国連邦艦が、幻想共和国艦の後方に移動しました。本艦および他艦からの攻撃を避けられる位置です」
「悔しいが、あの幻想共和国艦の火力は、我々3隻分の火力を上回っている。我々の相手は自分たちだけで十分だということだろう」
今や3隻だけとなったザフト艦隊の提督が、旗艦であるその艦の艦長とブリッジで話をしていた。
「はっきり言いますと、正面からでは勝ち目が無いです。モビルスーツもほとんど残っていません」
20代後半ぐらいの艦長が、30代後半ぐらいの提督に言いづらそうに告げた。
「それはわかっているが、逃げ帰るわけにもいかない……」
2人とも、幻想共和国艦である紅緋に歯がゆい様子であった。自分たちの艦隊をメチャクチャにされたのだから、当然のことだろう。異次元空間に浮かんでいる艦やモビルスーツの残骸が、嫌でも2人の目に入る。そして、その残骸の向こうに紅緋がいる。
「では、あの帝国連邦艦を撃沈することにしますか? 幻想共和国艦がわざわざ盾になるぐらいですから、重要な艦なのかもしれません」
「なるほど。……よし、他艦に連絡しろ。合図を待って、攻撃を」

   ボォーーーーーー!!!

 突然、旗艦の左右にいる2隻のザフト艦が、何の前触れも無く、巨大な火の玉と化した……。旗艦の左右で、巨大な火の玉となった2隻のザフト艦はそれからすぐに、炎とともに跡形も無く消えた……。綺麗さっぱりと、一欠片の残骸も浮かんでいなかった……。
「……な…なにが起こったんだ?」
「幻想共和国艦に攻撃した様子はありません……」
旗艦のブリッジで呆然と一部始終を見届けていた2人は、ようやくそう言葉を振り絞った……。どうやら、ブリッジの誰もその答えを知らないらしい……。
 しかし、さらに大変な事態に自分たちが陥ったということぐらいはわかったらしく、
「幻想共和国艦に向けて弾幕を張りつつ、全速で後退しろ!」
退却に躊躇することは無くなったようだ。
「了解しました! 前方に弾幕を張りつつ、全速力でグホッ!」
ブリッジの各担当官に命令を下していた艦長が、言葉の途中で苦痛の声をあげて黙った……。黙った艦長は、そのまま首を垂れて動かなくなった……。
「……こ…これは」
突然黙ったまま動かなくなった艦長を見た提督が、思わず言葉を洩らした。
 艦長の頭頂部に、鋭い小型ナイフが上から突き刺さっていた……。そこから出た血は、無重力であるブリッジでぶかりぷかりと浮かんでいる……。艦長は、目と口を開いたままの状態で死んでいた……。
 提督だけでなく、1人を除くブリッジの全員が、驚愕した表情で死んだ提督を見ていた。しかし、彼らの視線はすぐに、天井から降り立ったメイド姿の女性に移った……。