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ねこたねこ
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novelistID. 44603
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猫のムサシと猫のコジロウ

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 どういうことかはわからない。わからないけれど、老人の輝いた、澄んだ瞳に一点の曇りもなく、佐織はムサシが幸せな二年間を過ごしてきたのだと確信した。
「そう、なら……、なら、よかった……」
 佐織の目にまた涙があふれ、重ねた手の甲に水滴が落ちる。
 老人は再び描きかけのムサシの絵をしっかり手に持つと、その絵をじっと見ながら真剣な面持ちで
「おそらく……」
と呟いた。
そして、しばらく目をつむり、天を仰いだ老人は、ゆっくり目を開けると、しっかりと佐織を見据えて言った。
「ムサシに会いたい人がもう一人いる。その人が、すべてを教えてくれるだろう」

   エピローグ

優希也はまだ解約していない祖母の携帯電話の電源を入れてみた。
画面には夕暮れどきの庭で、木に登っていつもの景色を眺めている哀愁あるコジロウの後ろ姿が映し出された。
祖母が気に入っていた写真。優希也が設定してあげた待ち受け画面。ちょっと前のことなのに随分昔のようで、妙に懐かしく感じる。
ついでにフォルダーを覗いてみると動画が一つだけ入っていた。お尻をプルプルさせたコジロウが、突然ダッシュして祖母の布団にダイブする映像だった。
「ふ……ふふっ」
思わず一人、小さな笑い声をこぼした優希也は、メモを見ながら番号をプッシュする。

プルルルルルルッ、プルルルルルルッ、カチャッ……
「あ、もしもし、中山さんでいらっしゃいますか?」

   終