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「舞台裏の仲間たち」 72~73

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 この当時、黒光は夫・相馬愛蔵の浮気と
長男・譲二の病気に、心身ともに苦悩をしつづけています。
「その様子に胸を痛めていた碌山が、
彼女自身の苦悩と絶望を、自分の黒光への思いの絶望と重ね合わせて、
自身も、のたうつ様に苦しみながらこの作品を創り出した・・・・」
と、後に親友である高村光太郎が語っています。

 文覚という作品には、凄みがあります。
ある男が人妻に恋をしたあげく、一緒に駆け落ちをしてくれと迫ります。
女からは、それならば夫を殺してくれと頼まれて、夜半に首を掻き切ります。
ところがそれは、愛する女であったという逸話が作品の土台です
文覚上人という、歴史上でも名高い僧侶の実話を主人公に描いた作品です。


 筋骨隆々の体躯は、怒り肩で、屈強な腕組みをしています。
かっと眼を上空に向かって見開き、口は真一文字に堅く引き結んでいます。
内にある苦悩をねじ伏せようとする鋼鉄の様な意志力が、
凄みを持って筋肉や表情に溢れだしています。
見る者を圧倒するといわれている作品です。


 この作品も、報われぬ恋の苦悩を
文覚に重ね合わせようとして作られた、と言われています。
文覚、デスペア、女は「女3部作」とされ、いずれも黒光への強い思いと
苦悩を芸術に昇華させたものといわれています。