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SAS closed room

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 撃つ?
 いや、あの女は銃の扱いなんて知らないだろう。撃てるわけがない。仮に撃ったとしても当たる確率はとてつもなく低いはずだ。問題は――他の二人だ。いや、違う。だから違うんだ。何が問題は、だ! そうじゃない。そうじゃないだろう!

「そうじゃない! 俺達は助かるんだ! 全員で!」

 俺の上げたひと際大きな声に、イケメンの顔が歪んだ。

「助かる? 殺すと口にしたその口で、よくもそんな事が言えるな! お前の本心はもうバレてるんだよ!」

 違う! あれは本心なんかじゃ……そう言いたいいのに、唇が動いてくれない。どうしてだ! 俺は……俺は!

「ち、違う。とにかく落ち着いてくれ。大体、ここに出口がないはずがないんだ。だって俺達はどうやって入ったんだ? そうだろう?」
「閉じ込めた後、出口をコンクリででも埋めたんだろう。どうやって閉じ込められたか? なんてそんな事は問題じゃねぇんだよ! 今、現実には出口なんてないんだからな!」
 
 俺の必死の訴えもイケメンには全く相手にされない。コンクリで埋める? じゃあ俺達は一体どれほどの間、気を失っていたというのだろう。それは何か――違う気がする。じゃあどうやって?

「とにかく!」

 再び俺が口を開いたその時だった。耳なれない音が周囲を支配した。それが銃声だったと認識するのに、数秒の時間が必要だった。

「て……めぇ……!」

 同じく数秒の間の後、イケメンが女の方へと振り返り彼女を睨みつけた。弾は誰にも当たってはいなかった。いなかったが……あの女!

「い、いいかげんにして! それ以上喋るならまた撃つわ……! こ、今度は外さないんだから!」

 震える手で拳銃を握り締めながら、女は精いっぱいに威圧した。どうやら俺とイケメンが口論している間にも必死に拳銃を触っていたらしい。

「さ、酸素計を見てよ……! あ、あんた達が喚くから、もう……」

 女の言葉にはっとして計器に目を移す。そこに表示されていた数値に俺は思わず眩暈を覚えた。

 ――――64。
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文