SAS closed room
――――殺す。
俺から出たその一言に一気に室内は静まり返った。女も泣きやみ、震えながら俺を見ている。
殺す? 俺が? 誰を? 殺す? おいおい、本気なわけがない。本気じゃない。そうだろ?
そう思いながらも視線は部屋の中央に向いていく。武器、武器だ。4種類ある。あの中なら何を――いや、違う。そうじゃないだろう。皆で助かる道を――いや、これこそ違う。偽善だ。欺瞞だ。こいつらなんかさっきまで存在すら知らなかったような人間じゃないか。なんでそんなやつらの命を重んじる必要があるっていうんだ。違う、違う、違うだろ。そうじゃない、問題はそんな事じゃ無く……
頭の中でまとまらない思考が止め処なく流れ続けて、今にも脳味噌が耳の穴から溢れ出しそうだ。
鼓動が速くなる、手のひらにはじわりとした汗が滲む、そのくせ背筋がそら寒い。
「うああああああああああ!!」
ふいに女が金切り声を上げながら、部屋の中央に突進した。
ガチャン!
武器がぶつかり合う音がしたかと思うと、次の瞬間には女の手には拳銃が握られていた。
「う……撃ってやる! 私に近づいたら、撃ってやるんだから!」
女は慣れない手つきで拳銃を構えると、その照準を俺達3人に順番に向けた。
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文