SAS closed room
「っ!」
女が声にならない声で小さく悲鳴をあげた。
オッサンは布を取ったポーズのまま固まっている。イケメンは目をむいてそこに現れたものを注視している。そして俺もそれから目が離せなくなった。
――――そこにあったのは武器だった。
2歩前に進み、置いてある物を視認していく。
銃に、鉈……だよな、アレ。それとナイフにボウガン。その4つが部屋の中央に無造作に置かれていた。脳裏で電光の赤い文字がチカチカと光る。『4人全員で24時間を耐え抜く事は出来ません』――殺せっていうのか? 誰かを? 酸欠になる前に?
誰も動こうとしなかった。武器を手に取る事なんて出来ない。もちろん自分の身は守りたい。だが武器を持った瞬間に何かとてつもなく恐ろしい事が始まるような予感がする。うかつな行動はとれない。第一、いくら脱出する為とはいえ、人を殺すことなんて……。
ティンローン♪
再び、あの場違いな音が鳴った。
『グッドニュースです。あなた達はとてもラッキーな方たちだ! なぜって? その部屋にいる間はありとあらゆる犯罪が合法となるからです! 人殺しなんて瑣末な事。さぁ、欲望のままにどんな事でもお好きにどうぞ! 時間は限られていますよ』
流れてきた赤い文字を目で追うと同時に、俺の背筋に冷たい物が流れて行った。
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文