SAS closed room
自滅したやつらを尻目に、俺は血でぬめる床をゆっくりと踏みしめ、ボウガンの元へとやっとの思いで辿り着いた。隣にはオッサンの死体が転がっている。俺はオッサンのボロボロのシャツを引きちぎると、自分のシャツを脱いでオッサンのシャツと固く結び合わせた。それをボウガンの矢へとくくりつけ、天井を睨む。
俺はこれがしたかったんだ。それだけなんだ。
尿とゲロと血にまみれた赤い世界で、3つの死体に向って小さく呟く。
「見ろ……」
天井には薄く薄く線があった。その線を目で追うと、それはうっすらとではあったが、四角い形をしている。あれはきっと――あの場所はきっと‘外れる’。
願いを込めてその場所に向ってボウガンを放つ。ガキィンという音共に確かに矢が突き刺さる。矢から伸びたオッサンと俺の二人分のシャツを、残された力全てを込めて引く。
ガッコン
軽い音がして、矢と共に白い板が落ちてきた。
やった……やったんだ……! お……俺は……!
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文