SAS closed room
「きききききき、きみは! さっき、殺すと言った! 君に! 武器は! やらない!」
はあはあと息を切らしながら高らかに宣言したオッサンを、心の底からブチ殺してやりたいと思った。元はと言えばお前がションベンなんか垂らすから、こんなヒデェ現状なんだろうが!
「いいかげんにしてくれ……おまえら……」
なんだか段々と舌が痺れて上手く呂律すら回らなくなってきた。視界がボンヤリする。もう時間が無い。俺は出血と酸素不足が重なって、意識を失いかけてる。それくらいは分かる……。だから、だからもう……。
必死に前へと足を出す。一歩。そしてもう一歩――――
「ままままま、負けないぞーーーーっ!」
オッサンはそう吠えると鉈を持って高く掲げた。
「かわせみのなく頃に! だぁ!」
わけのわからない事を叫びながら振り回したその鉈は、緊張で汗に濡れていたオッサンの手からすっぽりと抜け、そのまま勢いよく宙を舞いそして――――
「え」
女が小さく声を上げたのと同時に、女の胴にぱっくりと突き刺さった。
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文