SAS closed room
な、んだ……?
何が起こったのかよく分からなかった。分からなかったが、俺の左肩からは真っ赤な血しぶきがあがっていた。嘘だろ? 冗談だろ?
「あ、あなた……あなたになんか殺されないんだから……」
その声に女の方へと視線を移すと、その手に握った拳銃は俺の方を向いていた。
撃ったのか? 俺を。このゲロ女っ!
自分でも驚くほどに急速に女への殺意が溢れて来る。
「てめぇ……! このクソゲロ女ッ!」
そう悪態をついた時、左肩に今までの人生で一度も味わった事のないような痛みが広がる。熱くて痛くてダクダクとした感触と共に、力がどんどん抜けていく。
クソッ! なんなんだ! こんな……こんな……!
畜生! 畜生!
それでも俺は何とか歩いた。歩いてみせた。ボウガンだ、今は――とにかくボウガンを手にしなくちゃ始まらない。必死に前へと進む、こいつらに説明するのはその後だ!
「はひいいいいいいっ!」
今度はなんだよ……? 体は脱力しているのに、脳が視界に入る物を認識していく。そしてそれは見たくもない現実だった。
オッサンが奇声を発しながら、ボウガンと鉈の上に覆いかぶさっていたのだ。
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文