SAS closed room
室内はまさに地獄絵図だった。
密室、低酸素、さらにはゲロと尿の臭いが充満している。腕で必死に口と鼻を押さえてみるが、気休めにもならない。
一刻も早くここを脱出しなくては!
―――脱出? 出来るのか? いや、するしかない。どの道こんな状態で残り20時間近くも持つわけがない。どこだ? どこかにあるはずなんだ。どこかに抜け道はある。きっとある。いや、絶対ある!
確信を持ってもう一度部屋をぐるりと見回す。眩暈と頭痛と悪臭と吐き気に耐えながら、じっと辺りを観察する。
壁、部屋の四隅――――不審な点はどこにもない。床……も同じくただの無機質なコンクリートだ。天井も同じ―――――いや、違う!
一瞬それは自分の目の錯覚だと思った。だが違う。違うと思う。あれは確かに――――
躊躇う余裕はなかった。俺は部屋の中央にあるボウガンに向って駆け出した。
ズキュウウウウウンッ
と、同時に銃声が響き渡った。
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文