SAS closed room
銃、鉈、ナイフ――この3つはいいとする。どれもこの室内で人を殺傷するのに適しているだろう。ただ、ボウガン。こんな狭い部屋で一体何の意味がある? 勿論、至近距離から撃てば、とんでもない殺傷能力だ。だが……これだけが何故か浮いているように感じる。心のどこかにささくれのように引っかかる。電光掲示板の赤い文字‘プレゼント’――あれは武器全体の事では無く、何かしらの……もっと本当の意味でのプレゼントとして捉えられないものだろうか?
それに酸素計だって少しあからさますぎないか? 確かに酸素は減っている。それは体で感じる。だけどこの数値の下がり方はどうにもおかしい。不自然だ。どこかから酸素を抜かれているんじゃ無いのか? だとすればそこには‘ここじゃない別の’空間があるはずだ。そうだ、つまり――――
「も、もう限界だぁ〜〜〜」
あと少しで考えがまとまりそうな所だったのに、オッサンの情けない声で思わず思考が途切れてしまった。なんなんだよ、と目を移せばオッサンが芋虫みたいなご子息をボロ〜ンとファスナーから出してるのが目に入った。今度はなんだよ、オッサンいい加減にしてくれよ! と思う間もなくそれは始まった。
ジョンジョロ〜ン
オッサン、壁に向って勢いよく放尿。マジかよ、勘弁してくれよ。
目を疑いたくなったが、鼻腔に届いた悪臭がこれが現実に起きた事だと俺の脳に認識させる。
「て、てめぇ〜〜!」
たまらずイケメンが立ちあがったその時だった。
「ぼえええええええええええええええっ」
ヒキガエルみたいな鳴き声がしたかと思うと、女が盛大に吐きだした。どうやらオッサンの行為とそのご子息に気分を害したらしい。っていうか、お前のゲロのがよっぽどキツイぞコレ!
「うぷっ」
イケメンもたまらず口元を手で押さえて立ちすくむ。おい、兄ちゃん、頼むから貰いゲロなんて事にはならないでくれよ!
作品名:SAS closed room 作家名:有馬音文