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「舞台裏の仲間たち」 70~71

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 「ということは、映像処理をしたものを、
 映画やスライドのように、場面ごとにホリゾントに映し出せということか」

 「いいですね、小山さん。
 そういう感覚で、物語の展開を追いながら
 臨機応変に空間や背景を、色と映像で舞台装置化するのが今回の狙いです。
 分かってもらえましたか・・・・」

 相変らず稽古場の中央では、雄二と茜が台本を読み続けています。
その様子を横目で見ながら、西口と小山が険しい顔をしたまま、
順平を睨んでいます。
手ごわい舞台装置になることが、ようやく鮮明になってきたようです・・・・



 
 碌山・萩原守衛は1879年(明治12)、
穂高町(当時は東穂高村〉で、農家の五男として生まれています。
当時、村には新時代と取り組む意欲的な青年たちがたくさん存在しました。
碌山の生涯の師となった穂高村高等小学校の教員、井口喜源治も
その一人です。井口とともに青年運動の中心となったのが、
後に新宿中村屋を開く相馬愛蔵です。

 碌山は昼の農作業が終わると村塾の夜学会に参加し、
新しい思想に触れていきます。
愛蔵のもとへは、仙台から良(黒光)が嫁いできます。
彼女が「嫁入り道具」としてもってきた一枚の油絵、長尾杢太郎の
「亀戸風景」が碌山を芸術の道にすすませる契機をつくります。

 荒川河畔に佇む牛たちの姿を描いた作品「亀戸風景」には、
従来の日本画には見られない迫真感に満ちた説得力があり、若い碌山の魂は
かつてないほどの激しい衝撃を受けます。
初めて見た油絵に、碌山の絵画への情熱が目覚め激しく燃え上がります。


 守衛は親しくなった黒光によって、さらに触発されることになります。
すでにおおくの文人たちとの親交を持つ黒光により、文学や絵画についての
新しい知識が碌山にもたらされ、さらに芸術に対する眼もひらかれていきます。
芸術に目覚めた守衛は、この後で何回か家出を繰り返します。

 ・・・・・・