「舞台裏の仲間たち」 68~69
「じゃ、そういうことでとりあえずの話は決まりました。
座長、我々は一足先に稽古場へ行っていますので、こちらが一段落をしたら
むこうへ顔を見せてください。
こんどの黒光の舞台は、装置などは一切使わずに、
光と色彩で構成をするそうです。
無い知恵を最大限に振り絞っても順平君の構想には、
ついていけそうもありません。
おい雄二、お前の快気祝いも続行中なんだから、
しっかりと女性陣に手伝ってもらって荷物を持ち運んでくれよ、
頼んだぜ」
じゃあと座長に手を振りながら、
男たち4人は連れだって、あっというまに立ち去ってしまいます。
茜とレイコも手際よく食材をまとめいます。
ちずるに会釈をしてから、一人だけ当惑をしている雄二をせきたてて、
時絵のスナックを後にしてしまいます。
「なんだよ、あいつら・・・・
随分と手際よく、あっさりと消えちまって。
そういうところだけは、つまらなく気を回す連中だな」
「あら、私も居ると邪魔と言う意味かしら。
いま、そういう風に聞こえたわ。
いいのよ、私もみんなと一緒に稽古場へ消えてしまっても」
「いや、君はここにいてくれ。
過ぎ去ったこととはいえ、つい先日に君にプロポーズをしたのは事実だし、
それをちずるに隠す必要もないだろう。
申しわけない、ちずる。
実はそういうこじれたいきさつも、この俺がつくっちまった」
作品名:「舞台裏の仲間たち」 68~69 作家名:落合順平