「舞台裏の仲間たち」 66~67
「冗談です、雄二君。
皆さんもうすうすとは聞いているでしょうから、
手っとり早く本題と行きましょう。
座長が病気だと言うのはすでに皆さん、ご承知だと思います。
あれこれ詮索をされる前に、ご本人から直接の報告が有ります。
ごめんねぇ、雄二君、
あなたは元気になったからいいけれど、
これから、長い闘病が始まるかもしれない人が居るの。
それと今夜はもうひとり、紹介をしたいゲストもいるし、なんだか
ややっこしくなりそうだから、先に登場してもらいましょう。
いらっしゃい、ちずる」
えっと、どよめく一同の空気のなかで、カウンターの奥から
そのちづるが現れました。
何も知らずにいた座長が思わず立ちあがり、つられて茜も再び立ちあがってしまいます。時絵が座ってくださいと手で指示を出しながら、目で全員を鎮めます。
「私が是非にと呼びました。
ちずるが此処に来た訳は、二人に復縁の可能性があるからです。
そうなるとこの中で、残念ながら、
二人の人間が失恋をすることになります。
ひとりは、座長と10年ぶりの恋仲が復活したのではないかと
ちかごろ噂をされてきたこの私です。
もうひとりは、10年越しの恋もまたまた実らない結果と
なってしまった、小山君です。
そしてこの二人分の悲しみと引き換えに、ちずるが座長と
おそらく復縁をはたします。
でもこの企みのことは、今日まで座長は一切知りません。
わたしひとりの独断で用意をしてしまった、再会の場です。
どう言う結果が出るのかは、私にもちずるにも、
そしてほかの誰にもわかりません。
この場で結果が出せるのは、座長ただ一人です。
では、皆さんで、座長の決意を聴きたいと思います」
どよめきが鎮まった頃に、座長が立ちあがりました。
すこしだけ空中に眼を泳がせた後、ちずるに向かって話し始めます。
作品名:「舞台裏の仲間たち」 66~67 作家名:落合順平