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「舞台裏の仲間たち」 64~65

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 「順平。
 原子力銀座が終わったところから2キロほど行くと橋があって
 その先の交差点を山側のほうに曲がれば、
 あとは一直線だって。
 遠いわね、結局5時間近いドライブだわ・・・
 生まれて初めての、原子力発電所もみられたけど」

 10数キロにわたって続いてきた原子力関連の建物たちが遠ざかると
また周囲には、平たん地に続く水田と海と隔てる厚みのある松林がもどってきます。
しかし振り返る後方には、松林越しに紅白に塗られた原子炉の強大な煙突群が
いくら走ってもいつまでも見えています。


 「このあたりから東北にかけては
 東日本を代表するコメどころだからね。
 刈り入れが終わったばかりとはいえ、やはり広大な水田が
 何処までも続いている光景というのは、いつ見ても壮観だ」

 「田んぼをみるとほっとするのは、
 農耕民族の本能かしら・・・・
 それとも、私たちがただの田舎育ちのせいかしら? 」

 「どちらもあてはまるようだ。
 さて、あのあたりかな、
 すこし登ったところで、カ―ブの先にある小さな家というのは」

 時絵ママに書いてもらった地図には、細かい道筋の目印と共に
「東海村の原子力銀座も良く見てくるように」という注意書きも
書き込まれていました。


 「もうひとつの日本の心臓だから、
 しっかりと目に焼き付けてくるのも一興よ。
 だってそれ以外には、あのあたりで見るものなんか一切無いの。
 4時間以上も走って、会話もなくなるころに
 丁度いい退屈しのぎになるはずよ。
 え?誰とそこまで行ったんだって、言えるわけがないじゃないの、
 そんな野暮なこと」

 そう言いながら笑う、時絵ママに見送られてはるばると
こんな海沿いの町まで順平とレイコはやってきたのです。


 ちづるの家は、すぐに解りました。

 家を発見するその前に、左へとゆるやかに曲がり始めた道路の脇に、
日傘をさしたちずるが、石垣に腰をおろして待っていました。

 停止した車から、レイコが元気に駆けだしていきます。
2歳先輩にあたるちずるは、実は高校時代からレイコがあこがれ続けたひとりです。
うす青いワンピースで日傘を傾けているちずるに向かって、
レイコが大きな声を上げて子猫のように戯れています・・・・