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『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

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「それでは冴子さんは、昨日は?」
「六甲山ホテルにいました。1時ごろに家を出て、阪急六甲駅で小塚さんを待ってたんです」
「お帰りは?」
「今日の11時過ぎ、かな」
「僕が車で送って来ました。11時です」
「ははあ」と、森警部補は滋に視線を投げてから冴子に戻した。冴子は恥ずかしさから、ハンカチを強く握りしめてうつむいた。

「犯行は、昨日の午後2時以降から深夜、ということになるようですが」
 村田巡査部長の言葉を引き取って、森警部補が続けた。
「犯人について、なんか心当たりはありませんか? 恨まれてたとか、関係がうまくいってなかった人がおったとか、あるいは金銭トラブルなんかですけど。どうやら、誰かと会っておられたようですな。後ろからも2カ所刺されてますんで、よく知った人物と思われるんですわ・・・刺し方からみて、おそらくは女性」
「さあ」とふたりは顔を見合わせて、首をひねった。

「分かりました。今、現場検証中なんで、また詳しいことが分かってからお聞きします。念のために、おふたりの指紋を取らせて欲しいんですが。それと口内粘膜も。いや、犯人の遺留物と区分するのんに必要なんですわ。後で係のもんを越させますんで、ご協力をお願いします」
 部屋を出ていこうとした森警部補は、思い出して言った。
「肝心なことを忘れるとこでしたわ。現場に残されてるファイルについて、詳しい方は?」
「さあ、どんなファイルなのか、まだ」
「ま、それも後ほど見てもらいましょうか。では失礼」